放置された犬のふんを黄色のチョークで囲み、飼い主に警告する−。京都府宇治市は住民に呼び掛け、「イエローチョーク作戦」に2年前から取り組んでいる。低コストで手軽に始められ、確かな効果も実感。ふん害に憤慨する他の自治体からも注目され、導入する動きが広がる。イエローチョークによって、お茶や寺社だけではない新たな「宇治」像も描かれ始めている。
 15日朝、宇治市の莵道車田連合町内会の役員6人が、地域の美化活動に励んだ。宇治川支流の堤防沿いで花壇を整備し、犬のふんを見回る。この日は草むらから三つ見つかり、近くの路面に黄色のチョークで矢印と日時を記した。道路に落ちている場合は円で囲む。ふんは原則回収せず、後で現場に戻って有無を再確認している。
 町内会の北昌平会長(80)は「簡単に誰でもできるのがいい。自分たちの地域なのだから、自らの手できれいにしないと」。ふんの減少を感じており、いつでも取り組めるようチョークの置き場所も整えた。
 「誰かが見ていると示すことで、飼い主もふんを始末するようになる。ふんが減ってきれいになれば、また汚そうとはしない」。そう指摘するのは、イエローチョーク作戦を考案した市環境企画課の柴田浩久主査(51)だ。市内では飼い犬の登録数が年々増え、ふんの苦情も絶えなかった。イエローカードをふん近くに置いたこともあったが、カード自体がごみになる。費用や手間も掛かって、やがて下火になった。
 そこで駐車違反の取り締まりを参考に2016年に始め、町内会や個人向けに実演で方法を伝えている。苦情の多かった市内の約30地域で、昨年1月に計約130個確認されたふんが年末には1割ほどに減った。
 新聞やテレビなどで活動を知った全国の自治体などから、これまで80件を超す問い合わせや視察があり、導入事例も増えた。東京都小平市は一部地域で効果を確認し、今月から全市域で始めた。静岡県富士市や福岡県久留米市も住民にチョークを配っている。「低予算で解決に導き、他の自治体も参考にしやすい」とは、実証実験を行った名古屋市の担当者。「宇治と言えば歴史や伝統のイメージが強かったが、先進的な取り組みに印象が大きく変わった」(大阪府島本町)との声も出ている。
 行政主導ではなく、個人で始める人も。愛知県一宮市立奥中学の岡本達幸校長は、正門前の犬ふんに長らく悩まされてきた。昨年末に作戦を知り、「これだと思った」。幸い、学校なので古いチョークはたくさんある。「残念!」「困っています」などと、思いも書き添えた。一進一退の状況が続いたが、今春ついにゼロに。「こつこつ努力することは、本校の教育目標にも合致します」
 取り組みの広がりに、宇治市の柴田主査は実感を込めて言う。「住民主体の取り組みが宇治から発信され、共感してくれる人がここまで増えるのは想定外。どんどんまねしてもらえればありがたい」

本記事では、宇治市における犬のフン害防止の取組を紹介。
同市では、「犬のフン害」で「困」っている方に対して「チョーク」を用いて「改善」を促す「イエローチョーク作戦」*1の取組を実施。同作戦の具体的な内容は、まずは「黄色いチョーク1本」を「用意」し、「 放置フンの周囲に丸をつけ」「発見日時」「を書く」、さらに「時間を変えて現場を見」て、「 あるとき」には「確認日時」を書き、「ないとき」には「なし」「と書く」*2。さらに、「予防」として「パトロール中」「と書」き、 「なし」「と書いた時間から」「あり」「と書いた時間の間で」「フンを放置していることになり」、「これを繰り返すことで減少」*3する、という。チョークによる「小さなショック」*4により行動変容を促す同取組。波及自治体での実施状況は、要観察。

*1:宇治市HP(暮らしの情報環境・衛生・ごみその他生活環境)「犬のフン害防止

*2:前掲注1・宇治市(犬のフン害防止)

*3:前掲注1・宇治市(犬のフン害防止)

*4:リチャード・セイラー、キャス・サンスティーン『実践行動経済学』(日経BP社、2009年)98頁

実践 行動経済学

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