東京・世田谷区長、ふるさと納税「税制崩壊の段階」 (日本経済新聞2019年6月25日) 

  東京都世田谷区の保坂展人区長は25日の記者会見で、ふるさと納税に伴う東京23区からの税金の流出に関し「税制そのものを崩壊させる段階に入ってきている」と述べ、批判した。寄付金集めに成功している多くの自治体では、地方交付税との「二重取り」になっているとも指摘した。制度について「疑問がある。抜本的な改革を」と訴えた。

 世田谷区は2019年度に、ふるさと納税で住民税が約53億円減収になる見込みだという。15年度は3億円弱だったことから、数年で急増した。

 国から交付税を受け取る自治体は、ふるさと納税による減収の一部を交付税で穴埋めされる。だが、23区を含む東京都は税収が比較的豊かであるとして交付税の不交付団体のため、「純減」(保坂氏)となる。同区によると流出額は全国の市区町村で最多とみられる。保坂氏は区全域でのごみ収集やリサイクルの費用に匹敵する金額だと説明した。

 保坂氏は「住民税が直接削られるのは不公平」と強調した。その上で、ふるさと納税の制度が改善されない場合、23区が交付税の不交付団体であり続けることに疑問を投げかけた。さらに、ふるさと納税には、富裕層に有利な「逆進性がある」とも指摘し、寄付金の上限を厳しく設定すべきだとの考えも示した。

本記事では,世田谷区におけるふるさと納税の取組を紹介.

同区では,「寄附金の用途を明確にした寄附メニューを用意」し,2018年度には,同「区内外から合計1億2560万6855円の寄附」を受けたことを踏まえて,2019年度には,「目的や使い道を明確にした寄附メニ ュー」,「区の魅力を伝える体験型記念品」等により「1億3000万円を目標に寄附を募る」*1方針を提示.

あわせて,2019年「6月からの制度見直し」迄のふるさと納税の取組の状況を受けて,2109年度には,同「区の区民税減収額」が「52億8590万」円となる「見込」*2みも提示.今後の「必要財源を確保」*3する方策は,要観察.

 

*1:世田谷区HP( くらしのガイド :区政情報世田谷区について: 区長の部屋 : 記者会見区長記者会見(令和元年6月25日)「ふるさと納税の取組みについて」(令和元年6月25日)

*2:前掲注1・世田谷区( ふるさと納税の取組みについて)1,2頁

*3:黒田武一郎『地方交付税を考える 制度の理解と財政運営の視点』(ぎょうせい,2018年),141頁

地方交付税を考える―制度への理解と財政運営の視点

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