九州の景観行政が着実に進展している。景観法を活用し、景観行政を進める景観行政団体は、九州全体の自治体の2割に当たる48団体となった。景観法に基づく景観計画を策定し、同計画を基に景観条例を制定した自治体は、2007年3月告示の佐賀市を皮切りに、7自治体となっている。
 景観行政団体には、施行時の04年に佐賀市を除く各県、政令市、県庁所在市の計14の県市を認定。その後、05年に6自治体、06年に10自治体、07年に18自治体が認定されており、団体数が年々増加している。鹿児島県内の自治体が最も多く、15自治体となっている。

同記事では、九州における景観行政団体の増加状況を紹介。同記事後段では、鹿児島市宮崎市の景観計画の策定の様子も記されている。
2007年12月1日現在の国土交通省の調べでは、308の自治体が景観行政団体へ移行している。都道府県、政令指定都市中核市は、「自動移行型」の仕組みを採用しているため、実際に景観法移行後、都道府県との協議を経て、景観行政団体へ「自主移行」した自治体は209となる。九州は確かに多くの自治体が「自主移行(協議移行)」している模様だが、愛媛県のようにほぼ全ての市町村が移行する県もあり、都道府県間での独自性が興味深い。
個人的には、景観条例や計画の内容とともに、都道府県と市町村間での協議に関心がある。国土交通省等によると、協議については次のようにあり*1、市町村側から都道府県に対して、景観行政団体移行への協議の要請があった場合、ほぼ「自動移行」となるようにも読める。

市町村の実態にかんがみ設けた仕組みであるが、景観行政は、基本的には、基礎的自治体である市町村が中心的な役割を担うことが望ましく、市町村が景観行政を担当する意欲を持ち、都道府県との協議を求めた場合には、市町村の体制上明らかに景観行政が担えない等の例外的な場合を除いて、原則的に都道府県は市町村が景観行政団体になることについて、同意することが望ましい

また、景観法は「一地域一団体主義」とも捉えられる一方で、景観という行政領域は、必ずしも一団体で完結するものでもない。これは、東京都心部を歩くとよく分かるが、景観の一体性と行政区域の一体性はそれほど相性が良いともいえない。
市町村と都道府県間関係を観察する者としては、同意要請があった場合、都道府県側がそれを認めることが妥当とも考える。例えば、北村喜宣先生によれば、「同意しないという知事の裁量はかなり狭いものが推測され」、「同意しないことは市町村の法定自治権の侵害になりうる」ともいう*2。一方で「協議=同意=移行=分離」という単線的な論理では、景観の一体性を崩す懸念もある。これらの問題が生じる制度上の課題は、東京都の景観審議会答申でも述べられているように、景観計画の策定段階でも景観行政団体間での協議が想定されていないことともされ*3、その制度化が必要といえる。地域性と広域性、まさに地方分権上の課題であり、更なる観察が必要。

*1:国土交通省農林水産省環境省『景観法運用指針』平成17年9月、4頁

*2:北村喜宣「よりみち環境法101 話が違う!? 同意裁量の広狭」『自治実務セミナー』46巻9号、2007年、27頁。

*3:東京都景観審議会『答申〜東京における今後の景観施策のあり方について』2006年、29頁