生活保護VSワーキングプア (PHP新書)

生活保護VSワーキングプア (PHP新書)

毎年の講義では、第一線職員(ストリートレベル・ビューロクラシー)について話をする。その際、あわせて、生活保護の現場に関する記事を提示し、学生さんからは小レポートの提出を求めることとしている。特に、いわゆる「水際作戦」の記事を読んでもらうと、小レポートの内容が二分する。それは、「水際作戦」の現場を嘆き、行政側を厳しく批判する内容と、本書でも「支援者の空洞化」(107頁)と指摘されるような現場で働くケースワーカーの活動量の限界を分析する内容とである。生活保護制度にはケースワーカーによる判断行為があることを知ると、学生さんにとっては、蒙が啓かれるようだ。
同書は、その標題が「エイリアン vs プレデター」のように何とも時流に阿ったものであるが、その内容は、骨太であり、思いやりもあり、そして、制度の可能性を示した良書(来年度の講義で紹介しようと思う)。特に、本当の被害者は「子ども」との指摘(134頁)は深刻。また、同書後段にある「自立率」の考え方(206頁)、生活保護の「プチ」利用(215頁)、埼玉県の取り組みは参考となる。