県は二十一日の県議会総務企画常任委員会で、一定期間ごとに条例を見直し、必要に応じて改正・廃止するための全庁的な仕組み(条例サンセットシステム)の素案を報告した。特に県民生活に直接影響を与える条例八十三件については見直し規定を定め、五年経過ごとの見直しを義務付ける。全庁を挙げて条例を見直す制度は都道府県で初めてという。
 県は三百三十四件の条例を定めている。条例を制定してからは法律改正などに応じて部分的な修正をしているが、条例全体を見直すことは少なかった。制定から十年間改正されていない条例も五十五条例ある。地方分権改革に伴い、今後さらに条例制定権が拡大される方向でもあることから、定期的に条例を見直す仕組みを設けることにした。具体的には、すべての条例を二〇〇九年度までに見直す。さらに、各種の許認可や手当の給付、一定分野の基本計画を定めるなど、県民生活に影響を与える条例八十三件については各条例に見直し規定を設け、原則として五年が経過するごとに見直しを行う。行政内部に関する条例など、その他の条例(二百五十一条例)は規定を設けないが、五年を目安として随時見直す。見直しは四月に施行予定の要綱(仮称)に基づき、各所管課が実施。それまでの運用実績を踏まえ、条例の必要性、有効性、効率性、基本計画適合性、適法性の五項目をチェックする。結果は議会に報告するほか、県のホームページで公表する。

同記事では、神奈川県の全条例を今後は、定期的に見直しを行い、随時、改正・廃止を導入する仕組みを検討することを紹介。
以前に拝読した北村喜宣先生の『自治力の逆襲』(慈学社)では、近年「見直し規定」を盛り込む条例が増加しつつあることが紹介されていた。特に「自動失効規程」を持つ、鳥取県採石条例は、強烈な印象を持って読んだ記憶がある*1
定期的に制度を点検することで、規定内容自体の時代状況への対応の効果があることはもちろん、定期的な改廃含みで条例と向き合うことが求められるため、自治体職員(特に所管課職員)の法意識の醸成効果も期待できる。そして、何よりも、条例の改廃となれば、当該条例を制定した議員や改廃を判断する議員に対する審査能力が問われてくる(巷間、「公約」の実現度を把握する取り組みも流行していますが、同仕組みは、議員活動への実質的な審査となり得るかと思われます)。興味深い仕組みであり、実現されることを期待したい。
ただ、少しに気になることは2点。
まずは、「見直し規定」を設ける段階で峻別が図られている点だ。これはあくまで一般論だが、例外事項(見直し規定を設けないこと)を広げると、意図的・非意図的にしろ、例外側とするように条例自体を位置づける行動が広がる可能性が否定できない。「見直し規定」が無くても見直しは行うことは、あくまで要綱レベルの規定であるため、見直しが確たるものとなるとは言い切れない。本当に全ての条例見直しを行うのであれば、当該事項に関する条例化を図るか、または、全条例に同規定を盛り込むことが論理的且つ説得力があるように思われる。
次いで、見直しの主体が各所管課である点だ。同記事のみでは十分に制度の詳細まではわからないが、もしも所管課だけの判断に止めれば、条例の改廃となるような判断を回避する可能性もなきにしもあらずといえる。
以上の二点については、同制度を効果的に機動させるためには、所管課だけではなく、県庁組織内全体での協議・調整の仕組みとして整備することが妥当であると思われる(と書くと、あまりにも研究テーマに引きつけ過ぎか、とも反省)。

*1:北村喜宣『自治力の逆襲』(慈学社、2006年)18〜20頁