東京都は1月18日、渋谷区松濤にある知事公館を売却する方針を明らかにした。
都知事公館は1997年、渋谷・東急「Bunkamura」裏手の高級住宅街の一角に建設。総工費約12億円とされ、当時の故・青島幸男前知事が住居として使っていたが、石原慎太郎知事は1999年の初当選以来、1度も入居していなかった。売却方針は、同18日に発表された都予算(原案)の中で明らかになったもの。公館のある松濤エリア周辺は第1種低層住居専用地区であることや、賃料の高さなどから賃貸の需要は少ないと判断。職員寮など都関連施設への転換案も検討されたが、改装費用がかさむことなどから、同案の実現にも至らなかった。
都財務局によると、具体的な売却方式や時期については現段階で未定。公共性の高い用途を提示する団体を優先し、買い手が決まらない場合は一般競争入札に踏み切る構え。

同記事では、東京都の知事公館売却について紹介。利用していないものは、利用するように改めることが望ましい。
猪瀬直樹副知事のエッセー「眼からウロコ」(2008年1月22日)では、知事公館という「失敗の検証」の必要性を指摘。同エッセーでは、青島都政期の公館設置に関する検討報告書が、青島知事に提示された時期が1995年9月とある。知事就任後、都市博中止の決断があり、コスモ信組があり、会議費・食料費問題が発覚したなかで、その報告を迎えたことを想定すると、青島流の判断も難しかったのかなあ、とも思う。なお、猪瀬副知事の次の指摘には、深く同感。結局は、耐震補強も公館の利活用も、愛だよ、愛と思う。

都の職員にも猛省を促したい。「古くなったから壊す」とは血も涙もない。文化財にたいする愛がないのだ。役人とは恐ろしいものだと思う。

なお、後に「リサイクルの青島」となる青島知事もまた、この公館には入りたがっていなかったことは広く知られる話。最後の著書となった『ちょっとまった!青島だあ』では、つぎのような言葉を残している*1

オレは公館に入りたくなかった。でも警護上迷惑をかけることになったので、知事公館に移った。いままで住み慣れたところが、あまりにも便利だったから、ラーメン屋一軒に行くんでも不便になった。それに関してだけは、オレのイメージとは違ったね。

*1:青島幸男『ちょっとまった!青島だあ』(岩波書店、2006年)117頁。同書は、青島幸男が自分自身に「過去を振り返ってもらった」書であるが、東京都知事時代については、知事選も含めて5頁のみである。東京都政を研究する上では、何とも悔やまれる

ちょっとまった!青島だァ (双書 時代のカルテ)

ちょっとまった!青島だァ (双書 時代のカルテ)