非常勤職員の労働意欲向上と待遇改善を目的に勤務年数に応じた昇給制度を検討していた東京都港区が、「地方公務員法で恒久的雇用を前提としない非常勤職員にはなじまない」との都の指摘を受け、四月からの導入を先延ばしにしたことが二十四日、分かった。同じく待遇改善、人材確保の一環として類似制度の導入を考えていた千代田区も、同種の都からの指摘で、職務、職責に応じて給与を増やす制度に見直し、予定通り四月から導入する。
 港区は約一年前から非常勤職員の意欲向上につながるよう、現状では一律の給与を勤務経験や能力に応じて変える制度の導入を検討してきた。都から昨秋、指摘を受け、「法を無視してまで導入するつもりはない」と、当初予定していた四月の導入を見送った。区人事課は「導入をあきらめたわけではなく、法の趣旨に沿う形で客観的に説明がつくよう引き続き検討したい」としている。同区の非常勤職員は保育士やカウンセラー、保健師など約三百人で、正規職員の一割以上を占め、勤務年数が十年を超える人もいる。
 一方、千代田区は、勤務年数と仕事の内容で給与を変える制度の導入を目指し、昨秋に関係条例を改正した。都からの指摘を受け、制度を職務、職責という基準に改めて、ゴーサインを得た。荒川区も本年度から、一般、主任、総括と役割に応じて区分を設けることで給与を増やす制度を導入済み。都は荒川、千代田区の動きを踏まえ、昨秋に全二十三区に、地方公務員法を逸脱しないよう注意喚起する中で、港区の検討内容も把握し、指摘した。都の区政課は「非常勤職員の待遇改善は否定しないが、年数に応じた昇給制度は芳しくない」と話している。

同記事では、港区における非常勤職員への本年4月からの昇給制度導入に対して、東京都からの指摘により導入延期となっている状況を紹介。非常勤職員であれば報酬と費用弁償の支給以外の給与が認められていないための上記判断か。
大杉覚先生も指摘されているように、現在の「公務」概念の広がりとその対応としての「オーバーホール」が必要となる場合*1、常勤職員以外の増加が所与となりうる。その時には、処遇についても制度設計上考慮しておかねばならない課題といえる。ただ、そもそも、昇給制度自体はあくまで任命権者の裁量で行われるものである。行政実例上は「昇給は職員の権利ではない」ともある*2。となると、常勤、非常勤とわず、「年数に応じた昇給制度」自体も見直す必要もあるように思われる。

*1:大杉覚「自治体の組織定数の新たな戦略と課題」『地方財務』No.639,2007年9月号、8頁

*2:橋本勇『新版逐条地方公務員法』(学陽書房、2002年)384頁。もちろん、行政実例自体が制度上拘束力を持ちうるかは、別として。