東京駅丸の内駅舎の中央角屋根の背後から、ビルが突き出してはだめ−。こんな規制ができる見通しとなった。一九一四(大正三)年創建当時の姿に復元する工事が進んでいる同駅舎の眺望を守るためで、規制の内容を盛り込んだ東京都景観計画の変更案を二十四日、都広告物審議会と都景観審議会が承認。新年度にも施行される。
 都景観計画では、事業主との事前協議により一定の範囲で高さを制限。建築物の姿が美しく見えるようにしている。現行の保存対象は、国会議事堂、迎賓館、明治神宮聖徳記念絵画館。新計画案では、これに丸の内駅舎を追加。東約二キロ以内の八重洲日本橋地区につくる建築物について、丸の内側の和田倉門交差点から見て、中央の角屋根の背後から突出する高さを事実上、認めないこととした。駅舎は二〇一一年度完成を目指し保存・復元工事中で、復元後の姿が規制対象となる。

同記事では、東京都が、東京駅丸の内駅舎背後の眺望保全のために、景観計画の変更を紹介。
東京駅の美しさは、その赤煉瓦造りにこそあるが、設計当初は、鉄筋鉄骨コンクリーの予定であった。これが「ドロドロとしたコンクリートが固まるという点にどうしても信頼がおけない」とのことで、図面がほぼ完成した段階で構造を変更したという*1辰野金吾の相撲好きが高じて、横綱の土俵入りの姿、又は、大銀杏を結った姿に似ていたとされる*2東京駅の復元が間近。東京駅から、行幸通りを通してみる風景の延長上には、宮城の生い茂った緑のみがあることが、「近代国家の力、国民統合の原理を祈念建築物の形で表現できないあいまいさ」が、「都市景観に対する日本的な美意識をよく示している」との分析もある*3。「横綱」東京駅の新たな時代での土俵入りは、丸の内ビルディング新丸の内ビルディングを露払いと太刀持ちとして並び立たせつつ、その背後もまたスッキリとしていた方が望ましい。

*1:初田亨『職人たちの西洋建築』(筑摩書房、2002年)73〜74頁

職人たちの西洋建築 (ちくま学芸文庫)

職人たちの西洋建築 (ちくま学芸文庫)

*2:増田彰久『近代化遺産を歩く』(中央公論新社、2001年)23頁

カラー版 近代化遺産を歩く (中公新書)

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*3:越澤明『東京都市計画物語』(筑摩書房、2001年)212頁

東京都市計画物語 (ちくま学芸文庫)

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