地方公社や第三セクターに対し、地方自治体が債務保証や損失補償をする、いわゆる「隠れ負債」が一部市町村で大きな負担になっている実態が明らかになった。総務省の2007年3月末時点の資料によると、健全性の基準となる「標準財政規模」を隠れ負債が超えた自治体は青森県大鰐町や北海道夕張市など11あった。塩漬けの土地を抱える土地開発公社向けに保証しているケースが多い。自治体が債務の肩代わりを迫られれば財政運営に支障が生じ、住民サービスの低下につながる可能性もある。
 自治体別の隠れ負債が判明したのは初めて。総務省の資料を基に日本経済新聞社が集計したところ、税収などに基づく「標準財政規模」に対する比率が全国で最も高かったのは青森県大鰐町で223%。同町の標準財政規模は32億円だが、大鰐地域総合開発など3法人に対して73億円の損失補償をしていた。バブル期のリゾート開発の失敗で金融機関から肩代わりを求められ、1997年から30年計画で返済している。

同記事では、第三セクターへの債務保証・損失補填をおこなう実態を紹介。将来の債務負担による自治体運営への影響を指摘。
金井利之先生によれば、自治体が「三セク」の管理を行ううえでは、設立時点での現在と影響力が及ぶ将来時点という、「時間的二面性」があるという。そして、この「異時点間の二面性の使い分け」が「三セク」管理の妙であり、不確定な将来費用と確実な現在費用を比較すれば、現在費用の最小化を選好する、と分析する*1。これは、「自治体であって自治体でない」ものへのリスク回避策としては、現在費用への厳格さよりも、将来費用への「寛容さ」(つまりは、「先送り」)が要因であろう。このことはまた、「三セク」に限らない。金井先生の同論文内の最後では、次のような鋭角な指摘がなされており、自治体の行政管理を考え上で示唆に富む(102頁)。「失敗」を自覚し、「失敗の検証」が必要ということか。

 系統発生の観点から見て、三セクの失敗は、民間企業と自治体の協力であるPFIや指定管理者や市場化テストでも繰り返されるであろうし、住民と自治体の協働である「サード・セクター」でも繰り返されるであろう。ただし、これらの失敗が表面化するには、時間的二面性から、今しばらくのタイムラグが期待される。“奇妙なエビデンス・ベース”という自治体の行動様式からは、失敗の“確実な証拠”が明らかになるまでは、続行することが可能なのである

*1:金井利之「第三セクター行政学」堀場勇夫・望月正光『第三セクター』(東洋経済新報社、2007年)92頁、94頁

第三セクター―再生への指針

第三セクター―再生への指針