全国の政令指定都市のトップが参加する「指定都市市長会議」は12日、浜松市中区のホテルで会合(ローカルサミット)を開いた。外国人市民との共生を目指す「多文化共生社会」をテーマに意見交換し、社会保障や教育問題など外国人の受け入れ体制の整備を国に求める「指定都市アピール」を採択した。
 本県からは開催市として議長を務めた鈴木康友浜松市長と小嶋善吉静岡市長が出席した。各市の代表が日本語指導員派遣、インターナショナルスクールの設立などの対策事例を報告した。サミットでは言語や文化、生活様式の違いを背景としたさまざまな摩擦が共生社会で生まれている現状が報告され、特に外国人師弟の不就学や社会保障の問題は「より複雑化、深刻化の様相を呈している」と指摘。アピール文では、こうした問題は国の法制度に問題があるとし、▽外国人の受け入れにかかる考え方の明確化と制度整備▽在留外国人にとって利便性の高い台帳制度の設計▽外国人学校の法的位置付けの明確化―を国に対する要望として盛り込んだ。ローカルサミットは今回で17回目で、浜松市での開催は初めて。全国で最も多い約2万人のブラジル人が住む同市が、同テーマを提案した。

同記事では,浜松市で開催された指定都市市長開会議の内容を紹介.同会で採択された今回のアピールでは,現在の時期であれば,地方分権改革推進に関する内容かと思いきや,多文化共生がテーマとなっている.これは,政令指定都市ははもちろん,特に浜松市では2007年現在では総人口に占める外国人登録の割合が3.93%(内,ブラジル人登録者数は全国市町村中最多)の特性や外国人市民会議や就労関係研究会,教育支援等という独自の取り組みを反映してか*1,特徴的なアピールといえる.同アピールの内容は,指定都市市長会HPにて全文を読むことができる*2
同アピールの2点目では,在留管理制度上の課題を挙げている.同管理制度は,「出入国管理及び難民認定法」による入国・在留許可手続、「外国人登録法」による外国人登録制度との二元制によって運営されてきた.大西裕先生によれば,日本における外国人登録制度については,自治体がその担当者となる点で,他国(韓国)と比較しても特徴的であるとされる*3.ただ,このように二元制であるがゆえに,「法務大臣が,在留資格に応じて的確に在留情報を把握し,適正な在留管理を行うことが必ずしも十分ではないのみならず,行政の非効率や外国人の負担も生じている」*4との問題が指摘されている.
いかなるサービスも住民の把握から開始されることから考えれば,自治体が不確定な情報で左右されないような仕組みが不可欠である.在留されている方にとっても不都合が生じないためには,確実な把握が不可避ともいえる.今年度より,総務省自治行政局市町村課外国人台帳制度企画室)にて「外国人台帳制度に関する懇談会」*5が開催されているが,その審議状況もまた,観察対象.

*1:岡部昌之「「地域共生」に向けた浜松市の取り組み」『都市問題研究』第59巻第11号,2007年11月号,85〜86頁

*2:指定都市市長会HP「多文化共生社会の実現に向けた指定都市アピール

*3:大西裕「日韓における在留外国人管理制度形成の研究」水口憲人・北原哲也・真渕勝『変化をどう説明するか:行政篇』(木鐸社,2000年)152頁

変化をどう説明するか 行政篇

変化をどう説明するか 行政篇

*4:法務省HP(出入国管理政策懇談会)第5次出入国管理政策懇談会「新たな在留管理制度に関する提言」(2008年3月)5頁

*5:総務省HP「外国人台帳制度に関する懇談会