蒲島郁夫知事は県政課題の検討、提案の場として外部有識者による「県戦略会議」を今夏までに発足させる準備を始めた。「外の視点」を取り入れる手法は、細川県政に先例があるが、政策の具体化にどこまで反映できるか疑問視する声もある。
 知事のマニフェスト(公約集)は戦略会議を(1)県民代表や経済界や大学、議会、行政関係者で構成(2)雇用、経済、農業再生、中心市街地活性化、公共事業改革、道州制などの部会設置(3)具体策を検討して素早く実行―と規定。議長には知事自身が就くとしていた。庁内検討では、個別政策より大局的見解を求める方向で調整している。「時代の流れの中、熊本県はどうあるべきか。外から見た長期的な視点を求めたい」と県企画課。人選は蒲島知事の人脈を軸に、東京や福岡の経済人や研究者の参画が見込まれている。細川県政で設けたのは、「くまもと21世紀懇話会」。浅利慶太(演出家)や黒川紀章(建築家、故人)、堤清二西武百貨店会長)=肩書は当時=の各氏ら十三氏で発足。会合ごとに助言を得ていた。「景観に配慮した土木行政など、提言が生かされた例もある」と同課。細川氏は併行して、県内有識者による「県政懇話会」も置いた。蒲島知事は「マニフェストに沿った庁内の政策、事業を整理するのが先決。庁内準備ができた上で、戦略会議に議論をお願いしたい」と語る。川辺川ダム有識者会議が終了予定の八月を境に、戦略会議の議論を本格化させたい考えだ。こうした政策形成手法について、熊本大大学院の秋吉貴雄准教授(行政学)は「外部の声を聞くこと自体は悪いことではないが、メンバーに当事者意識が芽生えないと、言いっ放しの評論に終わってしまう。既存の政策や地元の利害と反する方向性が出された場合、混乱する恐れもある」と話している。(小多崇)

少し古い記事となりましたが,同記事では,蒲島郁夫知事がマニフェストにおいて提案した県戦略会議を本年夏頃迄を目途に発足する予定であることを紹介.同会議に関しては,既に予算要求案として4,330万円を計上*1マニフェストでは,「幅広い県民代表,経済界や大学,議会,行政関係者が同じテーブルに就き」,「雇用・経済,農業再生,中心市街地活性化,公共事業改革,道州制など,幅広い分野ごとに設けた部会で,関係する県民代表参加の下に具体策を検討」*2との言及を受けての詳細設計はこれからの模様.例えば,当該「場」が常設設置となる場合,活用・効果を発揮するための要諦は,県政運営(特に,予算編成)の「歳時記」のなかに如何に落とし込むかにあるかと思う.その設置根拠から始まり,構成,審議内容,県政運営における位置づけ,既存各種審議会・委員会・行政内各種庁議等との住み分け,そして何よりも,県議会と関係等についての具体像はまだ把握できないものの,「創造的な政治参加」*3して,興味深い試み.
先日拝読した東国原宮崎県知事が公刊された「レポート」のなかにも県民参加の事例とその効果が紹介されている.知事は,事業仕分けをの取り組みを踏まえ,県内外の種々の参加者による「外部の目」による審議結果は「思っていたよりも妥当だ」との感想を漏らす*4.同会議の予算要求時の「事業概要」には,当該会議については「社会経済情勢の変化や多様化する県民ニーズ等を踏まえて,元気な熊本を再生するために有識者の意見を聴く場を設け,県勢発展の方向性を探る」とある.もしも今後の運営方針次第で,知事が思慮するための各種主体からの政策アイディアの聴聞機能に止まらず,「改革指向型政策決定システム」*5として確立させるとなれば,各種仕組みの工夫も又必要か.今後の具体化の過程は,要経過観察.

*1:熊本県HP(熊本県一般会計予算(平成20年度肉付け予算)の要求概要について)「各部局別一般会計要求の主な事業概要(様式−4)総合政策局

*2:かばしま郁夫マニフェスト『くまもと再生4カ年計画―くまもとに夢を、地域に力を―』2〜3頁(マニフェストが掲載されていた蒲島郁夫知事のHPは現在閉鎖されているのですね)

*3:蒲島郁夫『政治参加』(東京大学出版会,1988年)192頁

政治参加 (現代政治学叢書 6)

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*4:東国原英夫『知事の世界』(幻冬舎,2008年)144頁

知事の世界 (幻冬舎新書)

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*5:秋吉貴雄『公共政策の変容と政策科学』(有斐閣,2007年)270頁

公共政策の変容と政策科学―日米航空輸送産業における2つの規制改革

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