室蘭市経済部で企業誘致などを担当する吉田久史さん(44)が総務省発行の雑誌・地方公務員月報の巻頭グラビアに登場、キャリア採用職員として「サービスに努めたい」などと仕事に臨む意識や抱負を語った。
 室蘭市が平成19年募集から導入したキャリア採用制度の第1期の1人。食用油を扱う食品メーカーで19年間、人事や物流部門で活躍、昨年4月から市職員として仕事に励んでいる。吉田さんは「企業誘致業務では経験に基づき、進出企業がリスクを最小限に抑えるために想定している問題をいち早く察知できると思います」など民間出身の強みを紹介。官民の違いを「民間は利益最優先で株主などの利害関係人の範囲が狭い。役所は市民という広い対象を持ち、時には採算度外視の施策も必要。評価軸が違う」と表現した。最後に「民間で身につけた効率化や費用対効果の視点を生かしながら、多くの人の立場で考えられるよう努力し、市民サービス向上を実現したい」と抱負を述べた。
(鞠子理人)

同記事では,室蘭市におけるキャリア経験者採用制度で採用された吉田さんが,総務省自治行政局公務員課編『地方公務員月報』2008年5月号に掲載されたことを紹介.寝起きに同記事を斜め読みしたためか,「すわ,近年では「グラビア系地方公務員」も出てきたのか.やれやれ」と思うも,よく読むと,同誌の連載特集『経験者採用の職員に聞くに』の欄に掲載されたとのこと.
室蘭市もまた,他の自治体と同様に,職員退職者分の補充としての新規採用に圧縮が掛けられているなかで,経験を有する職員が限られた体制となりつつあるのだろうか,いわば「実践力」を有する人材補充が課題のよう.そこで,室蘭市では,2008年度にキャリア職員の採用を行っている.その募集内容を見てみると,企業会計制度と福祉制度に「精通」していること(「専門的技能」)がその要件とされていた*1
このように民間経験者が自治体に任期付きではなく任用されることで,従来自治体人事管理における原則とされてきた,「一括採用・一括管理」原則は緩やかに変わりつつあるともいえる.つまり,今後は,「社会人・中途採用」,「第2新卒採用」*2者の採用経路もまた重要な人材補給源となる.これらの任用管理を行う場合,応募する側の誘因を導き出す制度設計が重要かと思うが,例えば,募集方法を観察してみると,大別すれば,同市のように「職務概要」を(採用後の職を確定するものではないにしろ)概括的に「専門技能」的な規定しておく事例と「民間企業での職務経験が通算○年以上ある人」との就労経験年限規定だけを設ける事例がある模様.応募者にとっては,職務内容は限定されていた方が,その職務に該当者としては募集への行動となりやすい.ただ,このように余り入口段階で絞り込んでしまうと,任期付採用とは異なり,採用後の異動管理等を想定することもあるため,自治体側が従来の人事管理慣行を維持する場合には,採用後の人事管理で滞りが出る可能性も高い(もちろん特定職に「拘束」することでその滞りの解決もできなくはないが).一方で,就労経験年限だけを要件としてしまうと,技能のなかでもいわば「執務技能」が上手く伝承されないという問題も発生しうる.ただ,「執務技能」についていえば,「学習可能」であり「状況的」*3に形成することもできるともされる.
「グラビア」である必要があるかどうかはともかく,『地方公務員月報』における同企画は,これらを考える上では非常に重要な内容.

*1:室蘭市HP「平成20年度室蘭市職員採用試験『キャリア採用』募集案内

*2:礒崎初仁・金井利之・伊藤正次『ホーンブック地方自治』(北樹出版,2007年)202〜203頁

ホーンブック 地方自治

ホーンブック 地方自治

*3:松本雄一『組織と技能』(白桃書房,2003年)227〜228頁

組織と技能―技能伝承の組織論

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