公費がダメなら私費で掲示したい−。改選前の鳥取県議会で決めていた、県費による永年勤続議員の肖像画制作を廃止する方針に対し、十日の県議会代表者会議で、自民党から私費で制作するので掲示してほしいという提案があった。各会派が持ち帰り検討することになったが賛否両論あり、県議会は議員の“栄誉”をめぐる論議でもめそうだ。
 県議会は、勤続二十五年を超えた県議の肖像画を五十五万円で制作。これまで十人分を県議会別館ロビーに掲げているが、議会改革推進会議で〇七年三月、県費での制作と掲示の中止を決めた。しかし、掲示している肖像画の取り扱いについては判断せず、四月の改選後に結論を持ち越した。私費制作を提案したのは、今任期中に勤続二十五年を迎える議員三人を会派内に抱える自民党。一人は「歴史や伝統を大切にし、先輩に対する敬意を忘れるべきではない」と、会派に申し入れた理由を説明。昨年十月、全国議長会から永年勤続表彰を受けた別の議員も「素晴らしい功績を挙げる議員は、今後も輩出することを考えて判断してほしい」といい、これに対し、「自画像を描いてもらって掲げるなど恥ずかしい」と否定的な議員もいる。一方で、会派「自由民主」は「〇七年の取り決めを最初に議論すべきで、私費制作など論外」と突き放し、民主党系の会派「信」も「原則的には撤去」という姿勢だ。肖像画問題は、五月定例県議会中に代表者会議を開いて話し合う。

同記事では,鳥取県議会において,従来行ってきた永年勤続議員に対する,公費による肖像画作成と掲示を廃止する方針であったところ,私費により作成した肖像画掲示してもらいたいという要望が示されていることを紹介.
「絵描きの主観を極力抑えて描く.記録」*1であり,その一方で描かれる側の事情によっては,「つくられた御真影*2ともなる肖像画掲示の効用は,全く皆無かといえば,そうでもないようにも思う.石原慎太郎東京知事が,議員在職25年を振り返り,記した回顧録のなかで,次のような言葉を残している.「「政治」とは政治家という兵士の屍を累々と築きながら,さらに後から来る者にそれを踏み越えさせて成就に近づけていくものに違いない.しかし当の政治家たちは敢えて自らの屍を晒すつもりがないというなら,政治はとても政治たり得まい」*3.つまりは,肖像画を示す(「晒」す)ことで,「政治なるもの」の「成就」に結びつきうる可能性もなくはない.ただ,肖像画とあわせて,該当議員の「功績」を含めた活動成果と,それらへの県民からの評価も含めた文書も掲示しておければ,「政治なるもの」の成就ばかりではなく,議会というもののアカウンタビリティーの効用もまたあるかとも思うが.

*1:山藤章二『カラー版 似顔絵』(岩波書店,2000年)18頁

カラー版 似顔絵 (岩波新書)

カラー版 似顔絵 (岩波新書)

*2:猪瀬直樹ミカドの肖像・下』(新潮文庫,1992年)149頁

ミカドの肖像

ミカドの肖像

*3:石原慎太郎『国家なる幻影』(文芸春秋社,1999年)666頁

国家なる幻影―わが政治への反回想

国家なる幻影―わが政治への反回想