浜松市は、公有財産の情報を「施設カルテ」として1元管理し、有効活用する取り組みを始める。所管部署が単独で持っていた情報を資産経営課に集約し、年内にデータベース化を目指す。施設の長寿命化や維持管理コスト削減などにも役立てる方針だ。
 14日、同市中区の浜松商工会議所会館で開かれた市行財政改革推進審議会(第二次行革審、会長・鈴木修スズキ会長)の公開審議で明らかにした。市の公有財産は2007年度末で土地が約2114万平方メートル、建物は1769施設で面積は約260万平方メートル。教育委員会から各学校、消防本部から各消防署などと、所管部署ごとに土地・建物の面積や構造、劣化状況、空きスペースの有無などのデータを集約する。市はデータを検証して08年度中に有効活用方針を策定する。当面の対象は一般会計のほか、特別会計に関す消費者行政推進会議取りまとめる財産の一部だが、将来的には企業会計と外郭団体などにも着手。公有財産と備品などを含めた一元管理をする。

同記事では、浜松市において公有財産の一元管理を行う予定であることを紹介。いわゆる「ファシリティマネジメント」(FM)に基づき、市保有施設の一元的管理を行う模様。端的にいえば、定期健康診断の診断書を作成するというもの。なお、同委員会での審議内容は、現在のところ未掲載*1のため、同市の方針は把握できない。
同手法を利用する他の自治体としては青森県(総務部財産管理課・ファシリティマネジメント・財産グループ)等がある。その他では、横須賀市に設置されていた都市政策研究所では2002年度以降自治体において「ファシリティマネジメント」(FM)に関して検討を進めてきており、手法の整備順序を考える上では参考となる。その成果を拝読すると、まず導入する場合には、何よりもまずは分散的な施設情報を集約する体制を構築すること(いわゆる、情報の共有化)から開始される*2。「台帳(カルテ)」に記載する事項としては14項目あるとしており、大別すれば、基礎データ系(土地概要・土地価格・建物概要・建物仕様・施工金額・利用者)、施設保全系(部位・機器、保全計画・劣化状況・工場履歴)、エネルギー系(電気・ガス・上下水道利用料金等)・維持管理品系の4種類あるという。これらの各情報を下に、施設の適正再配置を行い、費用削減効果を期待することが最終的な目的といえる。ただ、そのためには、「消費者庁」構想ではないが、現行の各所管部局で個別分散的に行っている施設所管体制から、施設管理体制(部門)の「司令塔」*3として、管理組織自体の一元化を図るか、又は、これらの情報を通じた、利用施設間の恒常的な比較を行い、その結果に基づく監視・監督・勧告等の各種権限強化は不可欠か。
なお、横須賀市の上記研究のなかでは、「二酸化炭素換算値」という数値も「台帳(カルテ)」への掲載を提案している。これは慧眼。同値を的確に把握しておけば、経費削減のみならず、現在、国を挙げて進めている「低炭素社会*4の樹立のためにも、利用次第では有効な手法にもなりうる。
行革こそが最大のエコであり、また、エコこそが最大の行革でもあると思う。

*1:浜松市HP(行財政改革推進審議会)「審議会開催情報

*2:上之段功「実践研究報報告ファシリティマネジメント」『政策研究よこすか』第9号、2006年、138〜140頁

*3:首相官邸HP・消費者行政推進会議『消費者行政推進会議取りまとめ』(2008年6月13日)8頁

*4:環境省『環境循環型社会白書・平成19年度』(2007年6月)総説1・むすび)環境省内HPを参照)

環境循環型社会白書 平成19年版 (2007)

環境循環型社会白書 平成19年版 (2007)