政府の地球温暖化問題に関する懇談会(座長・奥田碩内閣特別顧問)は16日午前、中長期的な温暖化対策を盛りこんだ政策提言をまとめ、福田康夫首相に提出した。低炭素社会構築のため、中国やインドなど新興国を含む全世界で取り組むことが重要だと指摘。国内対策についても国民全員が参加し、費用負担を分かち合う仕組みが必要だと強調し、国内外両面での「全員参加」を呼びかけた。
低炭素社会・日本をめざして」と題した提言は首相が9日に発表した「福田ビジョン」を補強する位置づけ。首相は提言を受け取り、「3週間後の主要国首脳会議(洞爺湖サミット)でどういう形でまとめるか、わが国が指導力を発揮しなければならない。大変責任が重い立場である」と述べ、洞爺湖サミットへの決意を示した。

同記事では,「地球温暖化問題に関する懇談会」が福田康夫首相に対して,「全員参加」による「低炭素社会」構築に関する報告書を提出したことを紹介*1.内容は,同懇談会HP参照*2
6月9日に福田康夫首相が,2050年迄に温暖化ガスを60〜80%の削減を目指す内容の提案(『低炭素社会・日本』をめざして」(いわゆる「福田ビジョン」))が先んじて目標を示していたことから,同報告書の内容はいかなることになるかと関心を持って観察していた.内容としては,「環境先進国」として「国際的なリーダーシップ」を発揮し,「日本は2050年までの長期目標として,総理が表明されたように,現状から60〜80%の削減を目指すとともに,その実現に向けて,計画に基づき,革新的な技術開発を着実に実行していくことが必要である.中期目標も,公平で実効性のあるものとするため,セクター別の積み上げ方式を用いつつ志の高いものとしなければならない」(3頁)の言及がなされている.同懇談会が福田ビジョンによって後塵を拝されたような位置づけとなったことから,より具体的な工程表的性格となるかとも思っていたが,福田ビジョンを踏まえた方向性を示した補完的な性格となった模様.
個人的な関心は,同報告書にもある「環境モデル都市」(9〜10頁).ただ,正直なところ,下名の理解不足か,「環境モデル都市」の目指す方向や政策趣旨,具体的な内容が未だによく分からかったりする.既に,「環境モデル都市」については,地域活性化統合本部において,各自治体からの公募を進めており,82都市の提案が示されている*3が,「環境モデル都市」には地域活性化の文脈においても位置付けられている.環境モデル都市への選出を目指して,よもや「熾烈の度を加える」「陳情合戦」*4ことはないかとも思われるが,本質的な部分で,「環境モデル都市」と地域活性化との間では相性が良いのだろうか.同提案書のなかにも「都市・交通システム,自然環境,住宅・オフィス,エネルギー・資源・産業などの分野ごとのきめ細かな対策が重要」(10頁)とあるが,これらに対して各種新規事業を展開することよりも,まずは現行の自治体行政における環境影響度を把握し,その負荷解消することが先決とも思わなくもない.どうだろう.昨日と同様に,「行革こそが最大のエコであり,また,エコこそが最大の行革でもある」とも思う.
また,東京都が大規模事業所への二酸化炭素排出削減義務化の導入*5を検討とした担当者の方々によれば,「我々の検討を支えたのは,何よりもこれまでの制度運用の場面で,事業所の実態と現場の声を直接見聞きしてきたという実体験である」*6という.政府によるモデル指定もよいが,このような現場での着実な積み重ねこそが,自治運営における自治体間でのモデルになるのかとも思う.今後の自治体動向を観察.

*1:蛇足.ここ数年間「○○社会」という社会理論が政府側から百花繚乱の如く提出されている.歴史的文脈に身を寄せながら,これらの社会像を「政府」が提示することの意義や意図,各社会像がもつ含意,各社会像間の対比から見た当世における政府提示の社会像と現状との対比について考察してみたいものの,これまた,他分野(政治思想史研究者)の研究領域かとも思う.

*2:首相官邸HP・地球温暖化問題に関する懇談会『地球温暖化問題に関する懇談会提言〜「低炭素社会・日本」をめざして〜』(2008年6月16日)

*3:首相官邸HP・地域活性化統合本部「観光モデル都市提案リスト

*4:升味準之輔『日本政治史4占領改革、自民党支配 』(東京大学出版会,1988年)292頁

*5:東京都HP(報道発表資料 2008年5月掲載)「大幅なCO2排出削減を実現するため都議会第二回定例会に環境確保条例の改正案を提案します

*6:東京都環境局CO2排出量削減制度構築WG「置東京都における地球温暖化問題への取組」『ジュリスト』No.1357,2008.6.1,59頁

Jurist(ジュリスト)1357

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