蒲島郁夫知事は20日の県議会一般質問で、売り場面積1万平方メートルを超える大型商業施設を運営する事業者に地域貢献を求めている「大型店立地ガイドライン(指針)」の対象を、5000平方メートル以上に引き下げることを明らかにした。県は年度内に見直し内容をまとめ、来年度から実施する方向で検討している。昨年秋、延べ床面積が1万平方メートルを超す大型商業施設の郊外立地を規制する改正都市計画法が全面施行されたのを受け、増加が予想される1万平方メートル未満の店舗を指針の対象に含める狙い。引き下げは、蒲島知事が知事選のマニフェスト(政策目標を具体的に示した公約)に掲げていた。現行指針は2005年12月、全国で初めて施行された。進出大型店と既存大型店に対し、まちづくりや交通渋滞対策などの取り組みを記した地域貢献計画書の提出や、地域貢献に関する窓口設置などを求めている。県によると、指針に強制力はないが、対象となる全21事業者が地域貢献活動を実施。今回の見直しで、対象は65事業者に増えるという。溝口幸治氏(自民)の質問に対し、蒲島知事は「より多くの店に地域貢献を求めることで、各地で豊かなコミュニティーづくりが進むことを期待している」と答えた。

同記事では,熊本県において,従来,10,000平方メートル以上の大型店(特定大型店)を新設等をする場合に,地域貢献計画書の届出等を求めていた『大型店の立地に関するガイドライン』を改訂し,その要件を5,000平方メートル以上とすることを議会で報告したことを紹介.同県HPにもあるように,新設は増加傾向にある*1.同ガイドラインに基づく届出状況を見ると,各事業者あは着実に地域貢献を実施している模様*2は分かる.早々に地域貢献要件を設けた同県.他県でも同様の基準を設け,福島県のように6,000平方メートル以上とするところもある*3.フロントランナーも,知事マニフェストを通じて,その内容を革新する,政策移転の事例ともいえる.
この地域貢献規定,強制力を有するものではない,いわば,第一義的には共存共栄的性格ともいえる規定.そのため,その内容水準が保たれない可能性も回避できない.ただ,民間企業の栄枯盛衰を研究した新原浩朗先生の観察結果からは,結果的には,競争力を持ち続ける企業体は「「世のため,人のため」という価値観,行動規範をしっかりと共有する」経営者と従業員がおり,それぞれ自己規律する「「自発性のガバナンス」の実現」*4するとの分析もある.その自己規律を自治体が事業者に方向づけることを如何に行うかという,行政手法論(policy instruments)*5の課題でもある.要綱・行政指導の新たな復権か,はたまた限界とすれば,「環境管理型権力*6の具体化が課題か.

*1:熊本県HP「大規模小売店舗立地法届出状況

*2:熊本県HP「大型店の立地に関するガイドラインに基づく届出について

*3:自治体の動向は,次のHPを参照.千葉県HP(商業者の地域貢献ガイドライン策定までの経緯)第1回千葉県地域貢献ガイドライン策定検討会(2007年10月30日開催)「資料3 地域貢献ガイドラインに係る論点一覧、ガイドラインの論点に係る他県事例との比較

*4:新原浩朗『日本の優秀企業研究』(日本経済新聞社,2003年)253頁

日本の優秀企業研究―企業経営の原点 6つの条件

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*5:鈴木庸夫監修・山本博史『行政手法ガイドブック』(第一法規,2008年)28〜29頁(同書は良書.いわば,政策設計のレシピ集ともいえます)

行政手法ガイドブック―政策法務のツールを学ぼう (自治体法務サポート ブックレット・シリーズ)

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*6:東浩紀『情報環境論集』(講談社,2007年)48頁

情報環境論集―東浩紀コレクションS (講談社BOX)

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