総務省は二十七日、道議会での支庁制度改革関連条例の成立を前に、道議選の選挙区に変更が生じることを避けるために、公職選挙法改正案を八月下旬召集予定の臨時国会に提出する方針を固めた。道は条例の施行日を公選法改正後にしており、野党が参院で多数を握るねじれ国会の下、審議が長期化すれば、道が目指す来年四月の支庁再編に影響が出る可能性がある。
 公選法では道議選の選挙区を市と支庁の所管区域を基にするように規定している。現行法を適用すれば、複数の選挙区で合区されるが、道議会自民党・道民会議が条例に賛成する条件に旧支庁単位の選挙区を残すことを挙げたため、道が総務省公選法に特例を設ける改正を働きかけていた。 民主党は、道議会で民主党・道民連合が反対に回ったことを踏まえ、公選法改正案の審議には慎重に臨む構え。道が市町村の反対を押し切って支庁再編に踏み切ったことから、「拙速な再編を阻止する手法を検討すべきだ」との意見も浮上している。公選法改正は与野党が一致することが国会審議の慣習となっており、「衆院で三分の二の再議決を強行するテーマではない」(自民党道内選出議員)。民主党が改正案に反対する方針を固めれば、審議の行方は一気に不透明になる。

同記事では,本日早朝の北海道の支庁再編条例可決に伴い,総務省より,公職選挙法改正案を,臨時国会へ提出予定であることを紹介.北海道の支庁再編は歴史的事件.自治行政観察者のみならず,地方政治研究者を含めて,もう少し多角的に観察されても良い事例と思うが.
本備忘録でも見たこともあるように,支庁制度に関しては,公選法上の「選挙区」規定を通じた政府間関係における相克の蓋然性をもつ.そのため,一見すると北海道という一の自治体内の機構再編論といえる支庁論が,一自治体内だけでは「自己決定」ができかねる制度領域であるといえる(これも,別途,本備忘録でも見たように,類似の問題が政令指定都市の行政区にもあると思う).特に,現在の第29次地方制度調査会における審議方向*1ともいえる「自由度の拡大路線」*2の立場からすれば,まずは,これらの制度規制は見直すことが適切とも思えるものの,地方自治法以外には(もちろん,地方自治法も全て同路線を歩むとは限りませんが),例え所管省庁が同一の制度官庁であっても同路線を併走することが困難かもしれない.今後,北海道側では支庁再編条例として通過したものの,現状の国会の様相からすれば,改正公選法が通過せず,条例は可決されども,法の改正がなされず,北海道では支庁再編が執行できない状況(いわば,自治体の議会の判断が捨象される状況)も想定しうる.
この場合,北海道側の抗弁機会は限られてくる.国権の最高機関による「不決定」による関与は,唯々諾々と受容することになるのか.これを乗り越えるには「政治」という回路を用いるか.はたまた,「道州制特別区域における広域行政の推進に関する法律」に基づく,道州制特別区域基本方針の変更提案という「行政」回路で試みることになるのか.何れの回路に依拠すれども,最終的な決定がなければ,「回路先に立たず」となり,その実現も困難か.
なお,再開された地方分権改革推進委員会.今後は,出先機関に関する審議を進める予定にあるよう.第50回委員会では,「席上配布資料」として,「猪瀬委員席上配布資料」が配布された模様.同資料では,猪瀬直樹委員より,北海道開発局開発(私案)が提示*3されている.同私案では,北海道開発局のブロック機関(開発建設部)と北海道の土木現業所との統合に向けたアクションプログラムの策定を北海道に求める内容が記載されている.当該私案が,その後,委員会としての『第二次勧告』の骨子・素案・案・成案へと移行した場合,上記の公選法改正審議が停滞しているなかでは,支庁制度改革の改正論議にも波及せざるを得ないことも想定されうる.制度改革論議は,改革すべき現実的問題・課題の「真空状態」のなかでは議論はできないものの,まさに改革課題の「併発」*4の様相を呈することになる.要観察.

*1:内閣府HP(第29次地方制度調査会)第11回専門小委員会(2008年6月17日開催)配付資料「資料2地方議会について」(資料内の副題(12頁)は,その名もずばり「議会制度の自由度の拡大関係」)

*2:西尾勝「四分五裂する地方分権改革の渦中にあって考える」『分権改革の新展開』(ぎょうせい,2008年)3頁.

年報行政研究43 分権改革の新展開

年報行政研究43 分権改革の新展開

*3:内閣府HP・第50回地方分権改革推進委員会(2008年6月26日開催)「席上配布資料 猪瀬委員席上配布資料」2頁(席上配付資料は,以前にもありましたが,他の資料が同HPに掲載された後,暫く立ってから掲載されるため,見落としがち)

*4:伊藤正次「国による「上」からの分権改革」森田朗・田口一博・金井利之編著『分権改革の動態』(東京大学出版会,2008年)21〜22頁

分権改革の動態 (政治空間の変容と政策革新)

分権改革の動態 (政治空間の変容と政策革新)