教員採用汚職事件を受け、県教委の小矢文則教育長は二十六日、公立学校の教員採用試験制度の透明性を高めるため、試験の事務作業を第三者機関に委託する方向で検討していることを明らかにした。
 県議会文教警察委員会に報告した。委託先は県職員の採用試験を行う県人事委員会を中心に検討。七月十九日から始まる本年度の採用試験に間に合わせるため、七月上旬までに結論を出す方針。教員採用試験の事務作業はこれまで、教養試験の問題作成などを除き、県教委内部で職員が担当してきた。今回の事件では、職務権限がある担当者の改ざんを内部でチェックできなかったとされており、県教委で見直し作業を進めていた。小矢教育長は「透明性を県民に理解してもらうためにも、できる限り外部に委託したい」としている。文教警察委員会は波多野順代教育委員長ら教育委員六人を呼び、事件について話を聞いた。議員からは「危機管理、緊張感が足りない」「多くの県民は事件を氷山の一角と考えている」など厳しい意見が相次いだ。

同記事では,大分県において,教員採用をめぐる贈収賄事件を受けて,従来教育員会が実施してきた教職員採用試験業務のうち事務作業については,県の人事委員会を中心に,委託することを検討していることを紹介.
教員採用と昇任に関する選考は,教育委員会の教育長が行うこととなる.そのため,試験と採用を同一機関が行うという,いわば,教育委員会レベルでの「人事の一元化」が図られてきた.この効用を考えてみたとき,首相官邸に設置されていた,「公務員制度の総合的な改革に関する懇談会」の報告書の顰に倣うとすれば*1,「執行部主導から脱却し,教育長の任命権を十全に発揮できるようにするとともに,執行部の縦割り行政の弊害を除去し,各校横断的な人材の育成・活用を行うため」とでも言えるのだろうか.
ただ,試験と採用というそれぞれの任用制度がもつ特性を考えた場合,試験の独立性は確保されることは望ましく,いわば,採用からの「離隔距離」*2が置かれることが適切.とはいえ,余りに試験と採用とが離間されると,本質的に当該自治体(行政委員会)に適する人材採用は困難にもなりうる.そのため,つかず離れずともいえる「一定の離隔距離」があることが適切ともいえる.ただ,受験者にとってはその距離間がもつ「遠心力」に追いやられまいと思い,制度間の個人的結合に向けての「向心力」を発揮してしまう.やれやれ.
同記事では,そのいわば等閑距離を模索し,人事委員会に対して業務委託を検討中とのこと.では,人事委員会事務局の事務は,当該委員会事務局で処理されている(処理しうる)状況となるだろうか.更には,執行機関の独立性はもちろん,委託先との役割間での「適切な組み合わせ」*3も必要となり,これまた,「一定の離隔距離」を如何に確保するかが課題とも思う.

*1:首相官邸HP(公務員制度の総合的な改革に関する懇談会)『公務員制度の総合的な改革に関する懇談会 報告書』(2008年2月5日)3頁

*2:金井利之「会計検査院政策評価」『行政の評価と改革』(ぎょうせい,2002年)60頁

行政の評価と改革 (年報行政研究 (37))

行政の評価と改革 (年報行政研究 (37))

*3:財団法人日本都市センター「都市自治体の新しい外部化」『都市自治体の新しい外部化 Public Portfolioの提唱−』(財団法人日本都市センター,2008年3月)23頁