山形、天童、上山、山辺、中山3市2町で組織する山形広域行政協議会(会長・市川昭男山形市長)が6日、山形市役所で開かれ、市川市長から提案されていた広域連携の強化について協議した。事務局の山形市側から、広域連携の1つの在り方として、中心市と周辺市町村が連携、役割分担し、生活に必要な都市機能を確保しながら支え合う「定住自立圏構想」が提案された。この構想についての勉強会を継続することで合意した。
 総務省が今年5月に示した構想。少子高齢化から大都市圏への人口偏在の加速が予想される中、病院やショッピングセンターなどの都市機能を中心市が、自然環境や食料生産などの機能を周辺市町村が果たし、市町村間で協定を結んで相互連携することで地方圏での定住、自立、発展を可能にしていく内容。国からの財政措置や権限移譲など具体的なポイントはまだ示されていない。会合には各市町の首長が出席。今後、副市長、副町長らを加えて勉強会を継続していく考えで一致した。席上、各首長から、道路整備などのハード事業や公共サービスでの協力の提案も行われた。会合を終え、市川市長は「合併ありきではなく、まず広域連携を進めていく。その1つの手法として定住自立圏構想の研究を続けていくが、将来的に合併という選択肢が出てくる可能性もあると考えている」と語った。

同記事では,山形市を始めとする3市2町からなる広域行政協議会において,「広域自立圏構想」に向けての勉強会を開始したことを紹介.山形市側としては,3市2町での合併,天童市では同地域での既存の広域連携を主張していたなかで,「連携を深めていくという点では一致」*1を踏まえての構想が検討された模様.
総務省が7月4日から開始された先行的実施団体の募集*2への個々の自治体の動向は,いま一つよく把握できていないなか,山形県内市町村で,合併論が波形としつつも同構想採用への検討が開始されたことが分かる.同構想にいう「協定」の具体的な内容については,今後,総務省において確定し,圏域設定のイメージの詳細の検討を進めて行く予定とされている模様*3だが,これは移譲論と同様に,個々の自治体の「実績」に基づく協定*4からしか判断できないかと思われるため,同市町の取り組みは興味深く観察.
しかし,同県,総務省が,同募集に合わせて全国各地で開催し始めた,同構想に関する「説明会」*5の6会場で,「想定参加対象」とされる自治体の「対象」には含まれていない地域.もちろんバスケットクローズとしての「東京会場」への参加が想定されている,ということも考えられる.ただ,仙山線の快速で1時間程度の距離の山形県が,宮城県会場には想定されていないのだろうか.非常に不思議に思う.
地域力創造審議官からの同依頼文を拝読させて頂くと,同依頼文を受けての各種対応が,実態の把握,参加意向の取りまとめ等が都道府県が主体となり,伝統的ともいえるような,ボトルネック (bottleneck) としての都道府県に律速機能が期待されているようでもある.ICTが広がっている現代であり,更に,市町村の自主性を考えれば,各市町村毎から,総務省の地域力創造グループに,直接の各種提出手続きが行われてもよいのかとも思うが,これはこれで興味深い.ただ,同構想の報告書*6では,同構想は「県境を越えることもある」(7頁)としており,また「定住自立圏の圏域は、地方分権の流れの中で、これまでの広域行政圏施策のように、都道府県知事が関係市町村や国と協議の上、設定するという手法によるのではなく、通勤通学10%圏など中心市と密接な関係にある地域を基本に、住民の生活実態や地域の将来像等を勘案して、中心市と周辺市町村がそれぞれ協定を結ぶことにより自ら決定することが適当」(8頁)とあり,現行の都道府県区域を所定とすることはないようにも読むことができる.同依頼文では,現状としては仕方がないのだろうが,現行の都道府県の区域がまずは所与と置く初動になっているようにも思われる.特に,同記事の山形県を同説明会の「想定対象」と置いてはいないことは,県域を越えた山形市仙台市での既に蓄積されている連携実績を念頭に置きつつ考えてみると,これ又同構想の具体像を考える上では興味深い.

*1:山形新聞(2008年7月10日付)「山形市長が合併協議を提案 天童市長に、3市2町の枠組みで

*2:総務省HP(定住自立圏構想)「「定住自立圏構想」推進のための先行的実施団体の募集」(平成20年7月4日)

*3:下仲宏卓「定住自立圏構想について」『地方自治』No.729,2008年8月号,106頁

*4:松井望「都道府県と市町村の協議と受容圏−「条例による事務処理特例」制度の創設について」『都市政策研究(首都大学東京都市政策研究会・編集)』第2号,2007年,140頁

*5:総務省HP(定住自立圏構想)「「定住自立圏構想」推進のための先行的実施団体の募集及び説明会の開催について(依頼)」(総行応第1号,平成20年7月4日,総務省大臣官房地域力創造審議官),2頁

*6:総務省HP(定住自立圏構想定住自立圏構想研究会『定住自立圏構想研究会報告書〜住みたいまちで暮らせる日本を〜』(平成20年5月4)