宮城県は、民間から選任したオンブズマンが県政に対する苦情を受け付ける「県政オンブズマン」を10月末で廃止する方針を固めたことが19日、分かった。近年、相談件数の減少が続いており、11月から「県民相談室」と機能を統合する。
 県政オンブズマンは1996年、食糧費不適正支出、官官接待など一連の不祥事を受けた改革策の一環として発足。独立性の高い組織として県行政を監視し、必要に応じて担当部署に勧告している。県庁1階に相談室を設けているが、苦情の受付件数は97年度の605件をピークに減少。2007年度は143件にとどまった。県は、運営に年間約1000万円を支出しており、行財政の効率化を目指す観点から見直しを決めた。現在のオンブズマン2人の任期が切れるのに合わせて制度を廃止して県民相談室と統合。民間の有識者をアドバイザーとして登録し、案件に応じて意見を求める「県政相談員制度」に一本化する。当時の浅野史郎知事のアイデアで、導入前に県議会が「既存の制度と機能が重複している」と批判した経緯もある。県幹部は「県政オンブズマン制度は、県職員の意識改革のために一定の役割を果たしたと判断している。今後も第三者の視点を踏まえつつ、県民のニーズに応えていきたい」と話している。

同記事では,宮城県に設置されていた県政オンブズマンが本年10月末をもって廃止し,「県民相談室」との統合を図ることを紹介.同県HPを参照すると*1,2006年度分までの「活動状況報告」等は現在の所,見ることができる.
いわゆる「行政オンブズマン」の類型に該当するかと思われる「県政オンブズマン」.「行政オンブズマン」については,その「設置あるいは機能付与は行政首長のパーソナリティとか政策といったものに左右されること」から,その存続性に関して,「行政首長の去就によって存在が左右される場合がある」*2との観察がなされる.このような機構改革を首長交代によって説明しようとする立論は,必ずしもオンブズマンのみに設けられるものではなく,比較的広く共有された仮説かとも思われる.機構(組織,運営手続きを含む)改革は,新たに就任する首長にとっては,まさに「組織は戦略に従う」*3ではないが,自らの改革対象の一つに置きやすい課題なのだろう.ただ,よく目を凝らしていくと,機構改革の実施時期には相違もある模様.例えば,同記事の現在の宮城県知事就任は2005年11月であり,ほぼ三年間をかけての見直しともいえ,「首長の去就」もまた機構存続要因の一つと見る方が適当か.このような時期の相違は,機構の設置根拠と,その機構自体がもつ特性により拘束されることもあるのだろうか.つまり,設置根拠からすれば,議会との関係次第ではあるが,条例設置による直近下位の組織(局・部)よりも,規則・要綱等で設置される組織の改革が選好されやすいとも見ることができる.ただ,機構の特性については,管理・実施系の機構のように,新首長自らの執行体制を築くために想起に改正される機構と,住民統制系の機構のように,任期内で,その機構の機能を判断したうえで徐々に改めていく機構とによって,その改正時期は種々あるのだろうか.観察側としては,機構毎(又は共通する)の変容要因は興味深い.
ただ,自治体におかれるオンブズマンは「行政機関に対する指揮命令権限はなく,調査に基づく意見や勧告に止まる」*4ともされており,「「運用の妙」に負う部分が大きい」*5とされるなか,同県政オンブズマンの運用については,十分な観察結果が整理されることなく,姿が消えていくことは,自治観察上,これまた惜しい.

*1:宮城県HP「県政オンブズマン活動状況

*2:渡邊榮文『初期オンブズマン論』(ふくろう出版,2006年)127〜128頁

初期オンブズマン論

初期オンブズマン論

*3:ルフレッド・D・チャンドラーJr.『組織は戦略に従う』(ダイアモンド社,2004年)478頁

組織は戦略に従う

組織は戦略に従う

*4:礒崎初仁・金井利之・伊藤正次『ホーンブック地方自治』(北樹出版,2007年)217頁

ホーンブック 地方自治

ホーンブック 地方自治

*5:大橋洋一行政法学の構造的変革』(有斐閣,1996年)134頁

行政法学の構造的変革

行政法学の構造的変革