兵庫県は十七日、二〇一八年度までに危機的な財政状況の改善を目指す新行革プランの最終案を公表した。二十四日に開会する県会で、プラン全体と、専門家による審議会設置や三年ごとの再検討などプラン推進の手続きを定めた「行財政構造改革推進条例」案を提出する。行革の取り組みを条例化するのは都道府県で初めてという。
 最終案は、今年二月に策定した第一次プランと、八月提示の第二次案に修正を加え作成した。一八年度までの十一年間に生じる財源不足を一兆一千九百八十億円と試算。新規事業に必要な三百億円と合わせ計一兆二千二百八十億円を生み出すため、県は起債を抑制しながら、人件費や行政経費、投資的経費の削減をはじめとする改革で八千七百六十億円の効果を挙げる。新条例は推進方策(新行革プラン)を県会の議決を経て決めるよう知事に義務付ける。推進方策に基づき、知事は毎年度の実施計画を定め、実施状況を県会に報告するとともに意見を聞く。また、県内諸団体の代表らによる「県民会議」や、地方財政の専門家による「審議会」の設置も盛り込み、三年ごとに全体計画を見直すとしている。阪神・淡路大震災による負担の増大から、県は過去二回にわたって行革計画を策定したが、財政状況は悪化。“失敗”を繰り返さないため条例化に踏み切った。(畑野士朗)

同記事では,兵庫県において,行財政改革に関する手続等を規定した条例案を上程する予定であることを紹介.
同条例(案)の確認のため,同県HPを拝見させていただくと,本年9月に取りまとめられた『新行財政構造改革推進方策(案)の取りまとめ』が,今回の上程根拠となっている模様.『新行財政構造改革推進方策(案)の取りまとめ』の内容としては,「改革の取組みの着実な推進と適切なフォローアップを図るため、改革の基本方針や推進方策の策定及びこれに基づく改革の推進に関して必要な事項を内容とする」 *1と,やや一般的な記載に止まっている.一方で,『新行財政構造改革推進方策(案)の取りまとめ』とあわせて掲載されている『概要版』には,興味深いことに,本体であるはずの『新行財政構造改革推進方策(案)の取りまとめ』よりも,以下のようにやや詳しく記載されている*2

行財政構造改革の推進に関する条例(仮称)の制定
・議会や県民に対する情報開示と説明責任を強化するための自主的・自律的な枠組みを定め、取組みの着実な推進と適切なフォローアップを図るため、制定
・知事は、推進方策の策定等にあたっては、議会の議決を経る
・実施状況は、行財政構造改革審議会(仮称)(地方行財政、公会計の学識者等で構成)による専門的な審査の上、議会に報告・公表
・行財政構造改革について広く県民の意見を聴くため、行財政構造改革県民会議(仮称)(県民各界の代表等で構成)を設置
・議会は、推進方策の変更等について、知事に意見を述べることができ、知事は、これに対し見解を述べ、又 は必要な措置を講ずる

上程される条例案の詳細な内容を確認できないため,確としたことは分からないが,上記の『概要版』の既述から判断する限りでは,「行財政構造改革審議会(仮称)」「行財政構造改革県民会議(仮称)」等を主に規定する,いわば「プログラム条例」の模様.より正確には「行財政構造改革審議会(仮称)設置条例」的色彩が強そう.また,同条例内では,推進方針の策定等の議決や実施状況の議会報告等を規定することからも,行財政改革において,議会こそがその主体であることを明確に使用とすることが,同条例案の特徴なのだろうか.ただむしろ,「マクロ財政指標」と「予算審議過程における個別的行為規範の設定」がされた「財政決定主体を外側から規律付ける仕組み」としての「法的ルール設定」*3としての条例化であれば,財政規律の確保にはより資するのかもしれない.
また,同条例化により,各事業部局,行財政改革担当部局,理事者,知事,更には,行財政構造改革審議会(仮称),行財政構造改革県民会議(仮称),そして,議会というように,行財政改革にいおいて複数の「拒否プレイヤー」が出現することで「選考配置が拡散」し,行財政改革という「政策変更は困難を増す」*4蓋然性も低くはないかもと思われる.となると,条例制定後の調整機構の手腕次第か.

*1:兵庫県HP(「県政情報・統計:行財政・法規:行財政改革:行財政構造改革の取組み」『新行財政構造改革推進方策(案)の取りまとめ』204頁

*2:兵庫県HP(「県政情報・統計:行財政・法規:行財政改革:行財政構造改革の取組み」『新行財政構造改革推進方策(案)の取りまとめの概要』20頁

*3:藤谷武史「財政赤字国債管理―財政規律の観点から」『ジュリスト』2008.9.15号,No.1363,3〜4頁

Jurist(ジュリスト)1363

Jurist(ジュリスト)1363

*4:曽我謙悟『ゲームとしての官僚制』(東京大学出版会,2005年)47〜48頁

ゲームとしての官僚制

ゲームとしての官僚制