横浜市は二十六日、市の施設の名称に企業名や商品名を入れて収入を得るネーミングライツ命名権)について、企業提案の受け付けを年内にも始める方針を明らかにした。これまでは市側が対象施設を選定し、スポンサーを募集してきた。市によると、企業提案は全国で初めてという。
 市会決算特別委員会で、古川直季氏(自民党、旭区)の質問に中田宏市長が答えた。市共創推進事業本部は「市が対象施設を選ぶよりも、企業から直接ニーズを求める方がミスマッチを解消できると思う」と説明。スポーツ施設や文化施設などの命名権について、「募集をしないのか」といった問い合わせが企業から数件寄せられているという。命名権は二〇〇五年以降、三施設で導入された。いずれも五年契約で、横浜国際総合競技場は「日産スタジアム」(関連施設を含め、年間契約金額四億七千万円)、三ツ沢公園球技場は「ニッパツ三ツ沢球技場」(同八千万円が基本)、横浜こども科学館は「はまぎんこども宇宙科学館」(同三千万円)に変わっている。一方、〇七年末から募集している野毛山動物園には企業からの申し込みがなく、再募集している。全国で初めて動物園の命名権募集だったが、市民から「野毛山の名前を変えてほしくない」「動物園にはふさわしくない」などの声も上がっている。市は、財源確保に向けて命名権の導入を積極的に進めており、中田市長は「民間の提案で市の施設をうまく活用していきたい」と答弁した。

同記事では,横浜市において,市の施設への命名権の対象となる施設を,市によって指定する方式ではなく,企業側から提案とする方式を開始する方針があることを紹介.同市における命名権については,4月18日付の本備忘録でも取り上げた横浜市共創推進事業本部が担当.同市同部HPでは,現在3施設について命名権の対象としている*1
提案方式を通じて,選択の幅を民間側に提供する興味深い取り組み.ただ,提案者と命名権との関係を考えると,同記事にもある「マッチング」の問題は,依然残るようにも思われる.例えば,提案者と命名権を直結する方式を採用した場合であれば,命名権者の判定手続きがその一つ. 4月13日付の本備忘録でも取り上げた広告審査と同様に,「名称審査」を設けて,事前に規定した「ポジティブチェック」により,審査を行うことも一つの方式とも思われるが,事前の基準と,提案者してきた特定企業等との適合性の判断を示すことは,実質上は困難な部分も多いのかとも思われる.また,4月18日付の本備忘録でも取り上げた杉並区の「杉並行政サービス民間事業化提案制度」のように,命名権の対象となる施設の提案と,実際に命名権の対象を募集する別に募集する方式も想定される.同方式では,提案者は提案に留まり,命名権手続は従来の同市の手続通りとすることで対処することになるかとも思うが,同方式の下では,提案者側にとっては,必ずしも命名権を得ることにもならず,提案する誘因はそれ程大きくはない.更に,一部の施設では,施設の性格次第では,名称変更に伴い施設運営が困難となる懸念が広がることもあり*2,運営者側,利害関係者等の施設関係者との間で,提案段階からの「マッチング」のための手続整備も課題なのかとも思う.
具体的な手続きの設計を考えてみると,難しい部分も残るかと思われるが,今後の制度整備と運用を要経過観察.

*1:横浜市HP(共創推進事業本部共創推進課)「横浜市広告事業のご案内

*2:野田邦弘『創造都市 横浜の戦略』(学芸出版社,2008年)68頁

創造都市・横浜の戦略―クリエイティブシティへの挑戦

創造都市・横浜の戦略―クリエイティブシティへの挑戦