田辺市は1日、2009年度の当初予算編成方針を明らかにした。来春に市長の改選があるため骨格予算となるが、既存の事業にかかる消耗品や維持管理費などの経常的経費(人件費は除く)については各部に予算を割り振り、その中で使い方を決めてもらう「枠配分方式」を初めて導入する。予算編成の権限の一部を財政課から各部に委譲することで、主体的で効率的な使い方を促すのが狙いだ。
 市は編成の基本方針について「これまで重点的に取り組んできた施策をより具現化する」とし、具体的な取り組みとして、企業誘致など産業力の強化▽過疎対策や中心市街地活性化などの地域再生少子化対策と防災対策▽行財政改革の強化―の4点を掲げた。予算編成はこれまで、財政課が聞き取りをした上で各事業ごとに予算を付けていたが、枠配分方式では部内で割り振られた予算の使い方を判断する。各部に配分する経常的経費の予算は前年度比2%減にする。市財政課は「担当部署の方が市民のニーズを把握しており、部としてここに重点を置くとか主体的な予算編成を行うことができる」と説明。政策的な経費については従来通り個別に査定するが「将来的には政策的経費にも枠配分方式を広げていければと考えている」としている。さらに前年度に引き続いて新規事業枠「まちづくり優先枠」を設け、各部署からアイデアを募集する。予算は前年度の2倍の2000万円に増額。例として▽地域コミュニティーの強化事業▽合併効果の具現化事業▽まちづくりモデル事業―などを挙げており、単年度で行うソフト事業とそれに関連するハード事業を対象とした。07年度から実施した「ゼロ予算事業」についても引き続き奨励する。

同記事では,田辺市において,予算編成において,枠配分予算方式を同市では初めて導入する方針があることを紹介.あわせて,2007年度から実施している「ゼロ予算事業」についても継続・実施することを紹介.4月6日付の本備忘録でも紹介したように,宮城県のように枠配分方式を廃止する自治体も現れつつあるなかでの判断.
財団法人日本都市センターによる,全国の市区に対して,2007年度(2007年11月〜2008年1月)に実施したアンケート調査(回収率74.0%)の結果*1では,枠配分予算制度の導入済みの都市自治体は58.1%.ただ,そのうち,義務的経費(経常的経費)を枠配分の対象とする都市自治体が51.0%ではあるものの,総枠(経常的経費と政策的経費の双方)とする都市自治体も27.4%と,約3割はある.同記事にもあるように,同市も予定されている,「多種多様で機能的にも独立性が高い」*2とされてきた政策的経費を含めた総枠化による判断領域を各事業部門に付与することが,「枠配分方式」としての合理性から考えれば適当か.
同記事にもある各事業部門毎による「主体的で効率的な使い方」を進めた場合,一定期間は義務的枠配分の精査により効率化に結びつくことも想定されるが,義務的経費は,事業の改廃等を含めた判断となると,組織・人材を含めた事業自体の組み立てがなければ,義務的経費の編成にも限界がある.そのため,同方式を実質的に機能するには,各事業部門に,人事,機構(権限配分)に関する事項もあわせて判断できるような制度へと組みかえること,各事業部門内での自己規律又は秩序付けのための仕組みや機構の整備も必要となるのかとも考えられる.また,枠配分を進めることで,逆説的ではあるが,政策的判断を要する場合の全庁的な視点からの(水平的又は垂直的な)審議・調整の場の整備も必要かとも思う.政策的経費をも枠配分予算の対象とされている他の自治体では,各部門単位での自己規律又は秩序付け,更には全庁的な調整としてはどのような取り組みをなされているのだろうか.
同テーマは,細々と観察を開始しているテーマの一つ.今後の動向も要経過観察.

*1:財団法人日本都市センター『分権型社会の都市行政と組織改革に関する調査研究』(2008年3月)86〜87頁

分権型社会の都市行政と組織改革に関する調査研究-市役所事務機構アンケート調査結果報告-

分権型社会の都市行政と組織改革に関する調査研究-市役所事務機構アンケート調査結果報告-

*2:小島昭自治体の予算編成』(学陽書房1984年)28〜29頁