舛添厚生労働相は7日、後期高齢者医療制度(後期医療)の見直し私案を公表した。国民健康保険国保)を都道府県単位に再編したうえで後期医療と一体的に運営する。75歳での線引きを改め、すべての年齢層が加入する新制度とすることで、「切り離された」という高齢者の不満解消を狙った。財源については、「税の比率を増やさざるを得ないので、福祉目的税構想につながるのかなと考えている」と述べた。
 厚労相が設置した「高齢者医療制度に関する検討会」(座長・塩川正十郎財務相)で明らかにした。私案では、都道府県が新制度の運営主体となる。75歳以上でも企業で働いている人は、後期医療への加入を強制せず、被用者保険に引き続き加入できるように改める。 再編後の医療費財源について、舛添氏は福祉目的税に触れたが、具体的な負担割合は「今後解決すべき課題」として言及を避けた。現在の後期医療は「保険料1割・公費5割・現役世代の支援金4割」と負担割合が明確だが、再編により大部分の高齢者を抱えることになる国保に対し、被用者保険からどれだけ「支援金」が必要になるかは未知数だ。また、後期医療などの保険運営の引き受けに抵抗してきた都道府県に対する条件整備も今後の課題とされた。
 ◇
 後期医療の保険料について、年金天引きの見直しを打ち出している舛添厚労相は、介護保険料の支払い方法についても、年金からの天引きか口座振替かの選択制にすることを「今後検討する」と述べた。7日の衆院予算委員会での答弁。介護保険料は現在、年金額が年18万円以上の場合、天引きされている。

同記事では,厚生労働省に設置されている「高齢者医療制度に関する検討会」の第2回において,現在の国民健康保険制度を都道府県単位に再編し,後期高齢者医療制度と一本化し,保険者を都道府県とする大臣私案が提示されたことを紹介.同検討会の審議状況については,厚生労働省HP参照*1.また,同回分の資料に関しては,現在のところ未掲載.掲載後には要確認.
大臣の「私案」とは,公開に際して大臣決裁をとっているのだろうか,という疑問はさておき,提案資料自体を拝読しなければ,同提案の内容不確定ではあるものの,同記事の限りでは,同提案では,後期高齢者医療制度の審議内で提案された4つの制度案*2のうち,「突き抜け型」に近い発想なのだろうか.ただ,「突き抜け型」であれば,現在の保険者である市町村側にとっては,嘗ての主張である「国を保険者とし,すべての国民を対象とする医療保険制度への一本化」*3案は回避されることになる(ただ,現在では,全国市長会では一元化案は必ずしも主張されていない模様*4.今後の全国市長会の動向も要観察).都道府県もまた,多様でありリスクも分散している現状で,都道府県単位での保険者となることでリスク管理が可能であるかは要検討事項か.
ただ,実際のところ,4月1日付の本備忘録でも触れたところではあるが,保険者を何れにするかという議論は,シテ方としてではなくワキ方の議論でしかないようにも思われる.むしろ,被保険者の医療リスクを如何に管理するかが課題のはず.となれば,「多元的制度での財政調整」*5をもつ「リスク構造調整」の可能性も検討されるのだろうか.いずれにせよ,同検討会の資料は要確認.公開が楽しみ.
なお,蛇足.近年では,下名自身でも,自治行政の観察者であることを自覚し,それをまた楽しんではいるものの,学生の頃の行政観察生活の入口段階では,「社会保険制度の行政学」をしたい,という希望もあったことを思い出すと,何とも懐かしい.一身にして二生を経ることができるのであれば,社会保障制度は観察したいテーマの最上位.

*1:厚生労働省HP『高齢者医療制度に関する検討会 委員名簿

*2:松井望「広域連合としての後期高齢者医療制度」『東京』No.286,2007年12月,20頁(我ながら,何故,同小論を同時期書いたのか,その目的と記憶があやふやな一本)

*3:全国市長会HP・全国市長会医療保険制度改革に関する意見書−国民健康保険制度が抱える課題の解決に向けて−』(2005年4月)4頁

*4:次のHP参照.全国市長会HP『医療制度改革及び医師確保対策に関する決議』(2008年6月4日)

*5:岩本康志「試案・医療保険制度一元化」八田達夫八代尚宏編『社会保険改革』(日本経済新聞社,1998年)166頁