京都市は9日、市の新基本計画策定に向け、3、40代の若手研究者を中心に政策課題や策定方法などを検討する「未来の京都創造研究会」を発足させ、中京区のこどもみらい館で初会合を開いた。
 新基本計画は2011年度から約10年間の市政運営の指針として定める。研究会では、策定にあたって市政課題や方向性を行政側が事前に設定する従来の方法を改め、若手研究者の柔軟な発想で自由に議論するという。 メンバーは福祉や環境、経済、芸術など各分野で活躍する市内の大学の教授3人、准教授9人。来年3月までに計画策定の「検討素材」をまとめる。初会合では門川大作市長が「新進気鋭のみなさんが集まり心強い。幅広く厚みのある議論を期待する」とあいさつし、座長の新川達郎・同志社大教授が「新しい京都の方向付けが生まれるような議論をしよう」と呼び掛け、意見交換した。

同記事では,京都市において,2011年度からの計画期間をもつ,新しい基本計画の策定に当たり,その「検討素材」(具体的には,「策定方針(基本計画の枠組みと策定手法)の案」,「政策課題の抽出とその解決策の方向性の案」,「重点施策等の案」の3つ)を審議するための研究会を設置したことを紹介.
同市HPを拝見させていただくと,同研究会は,同記事も紹介されているように,「次代を担う30歳代から40歳代の各分野で活躍されている新進気鋭の若手研究者11名」*1から構成されるとのこと.同種の研究会等で,学識者を委員とすることは比較的常態化しているなかで,構成員を「若手」(定義は難しい用語の一つですが)との限定を置き構成することは,余り把握していない取り組み.興味深い.恐らく,同研究会の胆となる取り組みは,同市HPにもある「公募職員等の本市職員が参画」することにあるようにも思われる.つまり,この「公募職員から成る「次期基本計画策定支援チーム」(計30名)が,委員との議論やプロジェクトチームの活動に参加するなど,積極的に研究会の活動に参画」することで,「若手」研究者と「公募」職員とのコラボを期待さていることがあるのだろうか.同市のテーマである「「共汗」と「融合」」が,同素材づくりでも見ることができるか,興味深い取り組み.
ただ,純粋な意味での,法律学を専攻されている「若手」研究者が参加されていないことは少し気にはなる.7月3日付けの本備忘録でも取り上げた,土地区画整理事業に関する判例変更に関しては,本年9月10日に最高裁において「計画決定は訴訟で争える行政処分」との判断を示されたこともあり*2土地区画整理事業に限らず,広く行政計画にも汎用されうる判決とも考えられなくもない.これまでは,広範ともいわれてきた「計画裁量」に対する何らかの統制手続の整備は不可避かとも思われる.そのためも,法律学の専門家の観点は,計画策定関連の制度設計には不可欠とも思われる.
特に,計画策定における「事前対応」としての「集中型」,「分散型」*3等訴訟法務体制の整備,法務(審査)体制整備を図ることも考えられるが,都市自治体内外での法環境間との,「法的整合性」*4の観点からの,計画策定手続等の仕組み整備を検討する余地も今後あるかと思われる.具体的には,「計画のように多数の利害関係に関わる処分については,紛争を専門に解決する行政的な計画審査会を設置し,裁判所はその採決をレビューする方式が適当」*5のような提案もあり,同記事のような基本計画レベルにおいても,計画審査会的なものを設置することもまた一つの方策かもしれない.
いずれにせよ,その歴史を尊重しつつ*6,「若手」の可能性をも受容する土壌を持つ同市の取り組みは,要観察.

*1:京都市HP(総合企画局政策推進室政策企画・計画調整担当:広報資料)「「未来の京都創造研究会」の設置について

*2:共同通信(2008年9月10日付)「区画整理事業めぐり判例変更 計画段階の住民提訴可能

*3:財団法人日本都市センター編『自治体訴訟法務の現状と課題』(財団法人日本都市センター,2007年)22,28〜29頁

*4:「『都市自治体における法的整合性の確保に関する調査研究』の概要」『都市とガバナンス』vol.10,2008年9月号,60〜61頁

*5:西谷剛『実定行政計画法―プランニングと法』(有斐閣,2003年)278頁

実定行政計画法―プランニングと法

実定行政計画法―プランニングと法

*6:京都新聞(2008年10月10日付)「10人に市政功労者特別表彰 京都市「自治110周年」