高橋はるみ知事は十一日までに、複数の部局がばらばらに行っている道路整備など四十二分野の事務事業を、それぞれ一元化する検討に入った。縦割り構造になっている現在の組織を抜本的に見直し、スリム化や政策立案機能の充実を図るのが狙いだ。年内に改革方針をまとめ二〇一四年度末までの実現を目指す。
 危機的な財政状況にある道は、事務事業の一元化を進め、人員削減などを加速化させたい考え。知事意見として一元化対象となる四十二の事務事業を挙げ、九月上旬に各部局に検討を指示した。 たとえば道路整備は一般の道道が建設部、農道が農政部、林道が水産林務部と所管が分散。それぞれが計画、設計から国土交通、農林水産両省への補助金申請、事業発注などを行っているが、「業務内容に大きな差はない」(道幹部)のが実態だ。 このほか、ともに政策立案機能を担っている知事政策部と企画振興部は、「役割分担が不明確」との指摘があり、組織統合を含めて検討する。「食の安全・安心」などにかかわる消費者行政も、国が「消費者庁」設置を目指していることを踏まえ、農政部など五部にまたがっている所管の一元化を目指す。 道組織に対しては、九月に開かれた道行財政改革推進会議で、有識者から「複数の部署が同じような仕事をしている」と、縦割りの弊害を指摘する声が相次いだ。今後、知事は各部と調整した上で、改革の方向性や一四年度末までの改革期間のスケジュールなどを示した「道組織の見直し方針」を年内に策定する方針だ。

同記事では,北海道において,複数部署で同一的な業務を実施していると想定される事業の一元化を図り,2014年度末までに,既存組織の見直しを図る予定であることを紹介.
9月5日付の本備忘録でも取りあげた,同道に設置されている「行財政改革推進会議」の2008年度第1回目会議における,委員からの指摘(「組織の見直しを進めながら、複数の組織を統合することなどを含めて検討しなければ,業務はなかなか減らない状況にある」「総務企画部署が大きくなりすぎており,その部門を統合していくべき」*1)を受けての対応なのだろうか.同記事でも紹介されている「道組織の見直し方針」に関しては,同回会議の提出資料において,「今後の取組み」内でいう,「(仮称)道組織の見直し方針」*2に該当するものと察せられるものの,同記事にもある一元化の対象となる42事務事業については,現在のところ把握できず.今後,要確認.
首長部局機構の形成(又は,複雑化)要因は,一概には規定は出来ないものの,その要因の一つを,官僚行動を規定する制度の構成要素である「自律性(非民主性)と能力(専門性)」*3からも考えることはできそうか.例えば,道内外での制度環境変化に対して,組織機構が適応を試みるために,「能力の過剰蓄積・過剰使用」を行い,その結果,首長部局機構の「過剰設計」*4に至る.しかし,「過剰設計」に伴う過度の自律性も有することになるが,過剰設計に伴う「委任構造の複線化」(231頁)を回避するために,時折,首長による民主的コントロールを通じて機構再編が行われ「設計簡素化」に至る.ただ,その後,更なる制度環境の変化に応じるために,機構が細分化して,再度複雑設計に至り,その結果,民主的コントロールによる簡素化が行われるといった,複雑化と簡素化のサイクルが繰り返されているとも考えられなくもない.
ただ,同記事では,知事の直近下位機構の名称変更等といった「簡素化」に止まらず,道路の整備管理,消費者対策等のように,より細分化された実質的な機構単位の「簡素化」が言及されているようにも読める.これにより,民主的コントロールが単線的な関係になりうるとしても,組織機構が有していた(であろう)能力もまた喪失しては,新たな組織機構が各種制度環境の変化に対応することが困難になる蓋然性も避けられない.そのため上記の複雑化と簡素化のサイクルの出口にはなりうるものの,実際に機能するためには,組織機構の運営上の工夫が必要となるか.ある程度の自律性と能力を維持しつつ,組織設計の簡素化を図ることになるのかとも考えられるものの,実際に運営する段となるとなる,その程度の設計は難しい決着点.今後の同道における機構再編と再編後の組織機構の実質的な運営状況は,要経過観察.

*1:北海道HP(総務部:行政改革局:行政改革課行財政改革推進会議の開催状況:平成20年度開催状況)「平成20年度第1回行財政改革推進会議」1頁

*2:北海道HP(総務部:行政改革局:行政改革課行財政改革推進会議の開催状況:平成20年度開催状況)「資料2主な行財政改革の取組みの推進状況と今後の取組み」4頁

*3:建林正彦・曽我謙悟・待鳥聡史『比較政治制度論』(有斐閣,2008年)202頁

比較政治制度論 (有斐閣アルマ)

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*4:藤本隆宏『能力構築競争』(中央公論新社,2003年)323頁

能力構築競争-日本の自動車産業はなぜ強いのか 中公新書

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