東京都心の千代田区麹町で派手なネオンや看板を規制する独自ルールづくりが進められている。麹町は皇居に近く、武家屋敷の名残をとどめるビジネスエリア。景観を守りたい住民らの要望を受け、区は広告を規制する街づくり条例案を十一月議会に提出する。都条例を活用して罰則付きの強制力を持たせる方針だ。都心の一等地で広告規制に強制力を持たせるのは初めて。(越守丈太郎)
 対象は麹町全域。街づくり条例案では、広告設置の高さ、原色や派手な色の割合を規制。点滅するネオン広告を禁止する。特に皇居と上智大や四ツ谷駅周辺では、自社ビルに設置する自家用広告以外は認めず、屋上広告を禁止するなど厳しくした。ビルの立ち並ぶ新宿通りでは自家用広告も制限し、学校や医療機関を除き屋外広告を禁止する。区は十一月議会での条例案の可決後、都の屋外広告物条例による特定地域への指定を目指す。区の条例では罰則が規定できず、強制力を持たせるには都条例に頼らなければならないためだ。指定されれば、違反者に三十万円以下の罰金が科される。特定地域の指定は江戸川区に次いで二例目となる。麹町は皇居に近いため、町内の商店や企業はこれまで屋外広告を自制してきた。しかし、近隣の新宿では派手な広告やネオンが目立ち、その影響が麹町に波及するのを懸念した地元商店主や町会が千代田区に広告の規制を要望していた。新宿通り沿いで百四十年以上続く薬局を営む女性(77)は「皇居が近く、昔から看板やネオンは派手なものはやらないとみんなで規制してきた」。ただ「うちの看板は撤去の対象になるの」と不安そうだった。同じ通り沿いのビルで働く男性会社員(45)は「通り沿いに派手な看板がないから既に規制があると思っていた。派手な看板が増えるような地域とも思えないが」と規制の動きに首をかしげていた。

同記事では,千代田区において,麹町全域への広告物規制に関する条例案を11月議会に上程する予定であることを紹介.麹町の具体的な地域は,同区HPを参照*1
同記事でも紹介されている東京都における「特定区域の基準」に関は,「地区の景観特性に応じたきめ細かい規制を行うこと」*2こととされており,詳細は同都HPを参照*3.「東京の都市景観は多様であり,用途地域に基づく基準だけでは都内の地域特性にきめ細かく対応していくには必ずしも十分」ではないとして,「地域の景観特性に応じた広告物規制を進め,個性豊かな街並みの形成を誘導するため,広告物規制と都市計画法上の地区計画等及び東京のしゃれた街並みづくり推進条例上の街並み景観重点地区との連携、屋外広告物条例独自の制度である広告景観誘導地区を制度化」したもの.同記事でも紹介されている江戸川区では,2008年4月1日より同基準を施行.同区では地区計画をもとに規制とのこと*4
同記事に紹介されている,「区は広告を規制する街づくり条例案」は,屋外広告物法に基づかない自主条例*5ともいえそうだが,屋外広告物法内での特別区の位置づけは考えてみると興味深いテーマか.
屋外広告物法第26条(「この法律中都道府県知事の権限に属するものとされている事務で政令で定めるものは,特別区においては,政令で定めるところにより特別区の長が行なうものとする.この場合においては,この法律中都道府県知事に関する規定は,特別区の長に関する規定として特別区の長に適用があるものとする」)では,同法内の都道府県知事の権限は政令によって規定されるとはされてはいるものの,「本条の政令は未制定であるため,本条の規定は実際には動いていない」*6現状にあることからすると,「都道府県知事の権限」が具体的には何を示すかよく分からないようにも思われる.5月10日付の本備忘録でも触れたように景観行政団体へ移行した市町村では,「条例の制定・改廃というルール作りを含めて」「一元的に景観行政団体が主体的に行うことを可能」(61頁)とあり,小田原市各務原市大洲市小布施町では,同条例が制定されている(他の自治体での同条例の制定状況も要確認*7).
特別区においても,簡易除却等の事務の実施以外にも,屋外広告物条例を制定することが適当と整理されているのだろうか(特別区が,上記の御手洗潤先生の論考で整理されるところの「屋外広告物法が条例制定を認めない非委任自治体」(99頁)なのだろうか).よく分からないので要確認事項.ただ,新宿区のように,景観行政団体へ移行した特別区においても,屋外広告物条例は未制定の様子からすれば*8,どう理解することが適当なのだろうか.
なお,蛇足.10月5日付の本備忘録でも取り上げたように前職場近辺への規制.まさに,四ッ谷駅を降りてからの,新宿通りは,前職場への通勤経路.当時からも,四ッ谷駅からの途中にあるコンビニやお肉屋さんの広告を差し引いても,余り華美な広告がない地域と思いつつ,毎朝・毎夜歩いていたが,同記事にて地域による自主規制によって,その景観確保がなされていたと知る.なるほど.

*1:千代田区HP(住まいと暮らし・まちづくり地域別まちづくり)「番町地域

*2:東京都都市整備局市街地建築部市街地企画課監修『東京都屋外広告物条例の解説 改訂9版』(大成出版社,2007年)19頁

東京都屋外広告物条例の解説

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*3:東京都HP(都市整備局市街地建築屋外広告物)『屋外広告物のしおり』(2008年5月)20頁

*4:江戸川区HP「「一之江境川親水公園沿線」を景観地区に指定しました

*5:御手洗潤「屋外広告物法の理念と運用をめぐる諸問題(二)」『自治研究』第83巻第12号,2007年12月,93頁

*6:国土交通省都市・地域整備局公園緑地課監修『屋外広告の知識第3次改訂版〈第1巻〉法令編』(ぎょうせい,2005年)58頁

屋外広告の知識〈第1巻〉法令編

屋外広告の知識〈第1巻〉法令編

*7:全くの蛇足.国土交通省による同法に基づく屋外広告物条例制定のための「技術的助言」である『屋外広告物条例ガイドライン(案)』を見ると,「技術的助言」とはあるものの,これって・・・な気分.時間があれば,各府省が示されている「技術的助言」も確認してみたい気分

*8:新宿区HP(道路・公園・みどりのページ:道路)「屋外広告物