川崎市麻生区建設センターの男性職員が昨年末までの5年間、勤務時間中に、同僚にはり治療を繰り返し行っていたことがわかった。
 4月に内部からの投書で発覚。市は職務専念義務違反にあたるとして、5月26日付で男性職員を文書訓戒処分に、治療を受けた8人を口頭注意とした。市によると、男性職員は50歳代の係長級で、2001年4月にはり師の資格を取得。2003年から07年12月まで、建設センターや、業務で訪れた同市多摩区の多摩生活環境事業所の休憩室などで、道路の補修やゴミ収集を担当する職員計8人の治療をしていた。男性職員は、別の区の生活環境事業所に勤務していた時、仕事で腰を痛める人が多かったことから資格を取ったという。市の調査に対し、「治療は年3〜4回、1回15分程度行った」と説明。金銭のやり取りはなく、職員以外を有料で治療したこともないという。向坂(さぎさか)光浩・麻生区総務課長は「相手を思いやっての行為とはいえ、今後このような行為がないよう管理指導を徹底したい」と話した。

同記事では,川崎市において,勤務時間中に同僚に対してはり治療を行った同市職員に対して,職務専念義務違反として文書訓戒処分したことを紹介.4月9日付の本備忘録では,武家の商法ならぬ「役人の商法」に対する職務専念義務違反を取り上げたものの,同記事は,いわば「役人の療法」もまた職務専念義務違反となることを紹介.
同職員の治療行為が,勤務時間中に行われたため,同処分に繋がったのかとも察せられる.そのため,地方公務員法第35条に基づき,職員は「その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い,その勤務する地方公共団体がなすべき責を有する職務のみに従事しなければならない」*1という法理上の処分根拠はよく分かり,確かに勤務時間外に行えばよい,という結論には至る.とはいえ,例えば,パソコンが職場に普及し始めた頃,職場内でのデジタル・デバイドより,パソコンに精通・関心をもち,個人的に各種情報・技能を習得した職員に対して,パソコンの不具合毎にお助けを頼まれてしまう「名ばかりSE」または,資料の作成・文字入力を求められてしまう「名ばかり代打ち」(いわずもがな,麻雀・パチンコではありません.キーボードです)が叢生した地域があったとすれば(あくまで,下名の仮定・妄想です),それらの請け負た(又は,請け負っている)側の職員は,上司又は同僚の要請を通じて,本来業務を差し置いてしまい,結果として職務専念義務違反に当たると判断されることはないのだろうかとも,ふと思わなくもない(「パソコン」を,「法務」「法令」「条例等」等と読み替えても可か).同記事だけでは,同処分に至るまでの事情・状況等が十分に分からないため,個人的にも勤務時間外で行えばよかったのにと単純に思うが,何だかすっきりしない気分も残る記事.
6月19日の本備忘録6月27日の本備忘録7月4日の本備忘録でも見たように,自治体における執務環境との関係で,「その勤務する地方公共団体がなすべき責を有する職務」とは,具体的にはどのような範囲であるのか,今後考えてみたいテーマ.究極的には,職と職務,そして職責を厳格に遵守するには,職階制の復古しかないのだろうか.

*1:金子善次郎編著『地方公務員制度6 服務・分限・懲戒・労働基本権』(ぎょうせい,1991年)53頁

服務・分限・懲戒・労働基本権 (地方公務員制度)

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