「市民協働のまちづくり」を掲げる三原市の職員の約半数が、「市民協働」の意味を理解していない実態が、職員対象のアンケートで分かった。市が16日、市民協働推進委員会で調査結果を示した。
 市民協働に関する市職員へのアンケートは、8月に実施、約7割の734人が回答した。公共的分野で行政と住民が対等に協力し、課題の解決を目指す市民協働。その理解を問う設問では、「よく理解している」と「なんとなく理解している」が計50.8%。一方で「内容をよく知らない」と「言葉すら聞いたことがない」も計48.5%と半数に迫った。また、町内会など住民組織への個人としての参加について、18.9%が参加していない実態も分かった。市まちづくり推進課は「自ら掲げる市民協働を約半数しか理解していないとは残念。職員研修を開いて理解を徹底したい」と話している。

同記事では,三原市において,職員対象アンケートを実施したところ,「市民協働」の理解度に関する回答で,理解を持つ職員と十分な理解を持たないとする職員が,ほぼ拮抗した結果であったことを紹介.同市では,「市民協働まちづくり指針」を本年2月に制定され*1,「市民協働の基本的な考え方を明らかにすること」(2頁)を推進の最中.
同市による協働の定義では,「市民(個人),市民活動団体,住民自治組織,各種団体,企業,行政など,三原市を構成する多様な主体が,共通する地域課題や公共的課題の解決又は地域の魅力の創造のため,対等な立場で,相互の責任と役割分担のもとに取り組むこと」(3頁)とされている,これを端的に捉えれば,課題に対して多様な主体が役割分担をして解決を試みることといえる.そして,この役割分担を行うためにも「そのためには「対話」が重要」(4頁)であるとの認識を示されており,「相互理解による信頼関係の構築」のためにも,「地域ごとのきめ細かい対応が必要な分野(子育て支援,高齢者介護の支援,健康づくり支援など)」「地域社会との密接な連携が必要な分野(防犯・防災,青少年問題,ごみ処理対策を含む環境問題など)」「専門性の高いサービスが求められる分野(教育,芸術・文化・スポーツなどの生涯学習,国際交流,人権問題など)」「合意形成が必要な分野(都市計画マスタープラン,まちの環境を守るためのまちのルールづくりなど)」において,情報提供・情報交換,政策提言・企画立案への参画,共催,実行委員会等,事業協力,事業委託,補助・助成,後援等の「協働の形態」(13頁)を用いることで協働をおこないうるとある.
同記事を拝読した折,下名自身も「協働とは?」と聞かれても,それほどスラスラと適切な回答を提示する自信に欠けたため,同指針をもとにまとめてみたものの(同指針は,協働に関して一般的な「テキスト」としても良品とも思う),「理解」と評価されるだろうか.やや不安.
同指針内では,指針を策定するにあたり,市民へのアンケート調査を実施している.その結果から,「「市民協働」という言葉が,市民の共通理解になっていない」(「知っている」:34.1%,「知らない」:59.8%)とも分析されている.同記事でも言及されているように,職員側が協働に関して未知であることが「残念」といえるかは別としても,それこそまさに,同市が設定する協働方針(ルール)を市民も行政職員も協働(の構造に関する知識)の未知という,いわば「不完備情報」*2の「対称性」の状況で,協働の「相互理解」(4頁)のための「情報を共有できる仕組みづくり」(16頁)から着実に始めれば,協働という実にも繋がる可能性をもつのだろうかと思わなくもない.
とはいえ,「協働を支える鍵は,住民団体自治体と対等・協力関係に立って実働することにある」*3とすれば,「研修」や「仕組みづくり」もまた重要ではあることは確かではあるが,まずは,「問責関係」を明確にしたうえでの「実働」を試みることこそ(それが,同記事でも触れている,同市市職員の町内会等への加入率が18.9%であることを増加することであるか否かは問わず),その相互理解の増進に結びつきうるのではとも思う.

*1:三原市HP(まちづくり推進課三原市市民協働のまちづくり指針)『海・山・空夢ひらく市民協働のまちづくり〜三原市市民協働のまちづくり指針』(2008年2月)

*2:岡田章『ゲーム理論・入門』(有斐閣,2008年)167頁

ゲーム理論・入門―人間社会の理解のために (有斐閣アルマ)

ゲーム理論・入門―人間社会の理解のために (有斐閣アルマ)

*3:礒崎初仁・金井利之・伊藤正次『ホーンブック地方自治』(北樹出版,2007年)228頁

ホーンブック 地方自治

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