相模原市は二〇〇九年度の予算編成から管理部門の査定を廃止し、各局の裁量で事業選択する「局別予算」を導入する。人件費などを除いた財源の九割超を各局に配分。庁内分権を進めるとともに、現場で市民ニーズを把握する事業部門が自ら必要な事業を取捨選択することで、市民満足度を向上させる狙い。
 相模原市は〇七年度に局を設け、予算編成でも各局に一定の裁量権を認める形で進めてきた。〇九年度からはさらに局の裁量権を拡大し、管理部門による査定を廃止する。現時点で見込まれる〇九年度の一般会計当初予算千四百四十一億円(一般財源ベース)のうち、人件費や公債費を除く行政運営推進費と扶助費計六百八十五億円の92・8%に当たる六百三十六億円を計八局に配分。加山俊夫市長と副市長、教育長、各局長による「トップマネジメント会議」で定めた基本方針を踏まえ、各局が配分された予算額の枠内で自ら実施する事業選択と予算編成を行う。残りの四十九億円は、「母子生活支援施設整備」など同会議で決定した十六件の「市長特定事業」に充てる。道路整備や学校大規模改修などで市民の意向や現場の判断を優先する事業選択が可能になるという。市企画財政局は「現場の声を生かして管理部門の査定と市民ニーズの”ずれ”を解消し、限られた財源で効率的な事業展開を進めたい」としている。

同記事では,相模原市で,枠配分予算制度として「局別予算」を導入することを紹介.4月6日付の本備忘録で取りあげた宮城県のように枠配分方式を廃止する自治体がある一方で,10月2日付の本備忘録でも取り上げた田辺市とともに,新たに採用する自治体も現れている.
同市HPに掲載されている「平成21年度予算編成方針」を拝見すると,「平成21年度予算編成に向けては,局による事業選択,財源活用の裁量を拡大するため,1次枠,2次枠の区分を廃止し,一部の経費を除いて包括的な財源配分を行う」(1頁)として,92.8%を局枠として配分することになる(前年74.5%)*1
更に,同市の取り組みの場合,その規模のみならず,「管理部門による査定を廃止」することも大きな特徴.ただ,規模・権限の大規模な移譲を進める様相を拝見すると,翻って,各局の「枠」遵守を含めた全庁的な調製をどのように進めるのだろうかという関心も沸く.事前統制としての「トップマネジメント会議」の役割が大きくなるのだろうか,または,同市の財政部財政課による「予算の編成,配当及び執行管理」*2は継続することで,「査定」は行わなくとも,各局における予算編成時の「技術的な助言」を行うことで調製をはかるのだろうか,はたまた,局間独自に「枠内」についても水平的調整をはかることを想定されているのだろうか.興味深い.
枠配分予算制度を通じて,「予算編成は漸変的なものであって総括的なものではない」*3ともされる編成過程がどのように変化するかは,要経過観察事項.
なお,蛇足.同市の場合,政令指定都市への移行手続きに進めているなかでの枠配分制度の導入.同記事のように「局」という組織機構毎での予算編成の「分化」を進める一方で,政令指定都市移行に伴い行政区を将来導入することになると,行政区の予算編成をどのように進めるかという課題も出てくるようにも思われる.行政区の機能次第ではあるが,行政区に関しては,組織機構毎での予算「枠」内の編成の一環として位置づけるのか,又は,地域毎の予算編成の「分化」を進めるのか(となると,局毎の枠配との不一致も生じかねない),はたまた,行政区を「統合的」に所管する局を設けて,当該局において配分された「枠」をもとに一括的に予算編成を進めるのか.枠配分予算制と行政区における「予算要求システム」*4との間では,適切な制度的な補完関係となるか,これもまた,個人的には要観察事項.