ニューヨーク(CNN) ニューヨークのマイケル・ブルームバーグ市長が3選を目指し市長任期を2期に定めた条例改正を求めていた問題で、同市議会は23日、採決を実施し、賛成29票、反対22票で可決した。
市長は、同時多発テロで打撃を受けたニューヨーク市の再建実績などを強調、条例改正を促していたが、市議会の可決を受け、「正しい選択だ。米景気後退で歳入が減っている中で我々は重要な政策決定を迫られている」などとする声明を発表した。市長は今年10月初旬、条例改正を提案していた。 同市長はこれで、来年11月にも実施する市長選で3選を狙った出馬が可能となった。23日の議会審議では一時、反対派が条例改正には住民投票実施が必要との意見も出し、混乱した。 大手の経済情報メディアを経営し、富豪としても知られるブルームバーグ市長は2001年、米同時多発テロ後に当選、2005年に再選された。当初は共和党だったが、07年に離党、独立派となった。

同記事では,ニューヨーク市において,任期4年2期までとする再任要件(term limits)を改正する条例改正し,3期以上の再選を禁止する条例*1を可決したことを紹介.投票に至る過程と結果に関しては,ニューヨークタイムズ紙を参照*2
総務省の調査結果(自治体国際化協会からの提供資料)では,人口100万超の大都市では,強市長制.弱市長制のいずれの都市において4年(又は2年)2期との規定を置く自治体が多く見られる.一方,人口100万以下の都市では,再任要件がない都市(シカゴ,デトロイトインディアナポリス等)もまたあることが分かる*3.同調査を踏まえた,『首長の多選問題に関する調査研究会報告書』では,「アメリカ合衆国では,50州のうち36州が知事の多選制限を行っており,また,人口50万人以上の32都市のうち我が国の地方公共団体と類似の強市長型(strong mayor-council system)の都市19都市について見ると,8都市が任期制限を行っている」*4とも記することで,「多選制限」は,米国の大都市においては,標準装備とまでは言い切れないにしろ,一定割合では整備されていることを言及している.
同市においても,従来の4年2期というゲームのルールは改訂されるものの,再任要件を撤廃することなく,新たに4年3期という再任要件を設けたことは,これもまた,「一定の任期が,はたして意図されている目的を完全に達成するものかどうかは,確答できない.しかし,任期の長さが政府の精神と性格とに実質的な影響を及ぼす点,それだけ目標達成の方向に役立つということはいえよう」*5との考え方に起因するものなのだろうか.
ブルームバーク市政では,2005年に憲章改正をすすめた際,1975年の財政危機に伴い州議会で制定された財政緊急事態法が2008年7月1日で執行されることに先んじて,憲章内に「ニューヨーク市民の自治による行う意思を憲章に明示するように要請」*6し,予算制度改革を実施したとされる.いままさに目の前にある危機を同制度を通じて対処できるか,次なる首長の就任者を含めて,「アメリカにおける大都市行政の構造」を要経過観察.

*1:日本経済新聞社(2008年10月24日付)「NY市長3選へ 議会が条例改正案可決

*2:The New York Times(October 23, 2008)「Council Votes, 29 to 22, to Extend Term Limits

*3:総務省HP・首長の多選問題に関する調査研究会首長の多選問題に関する調査研究会報告書参考資料』(2006年11月17日)29頁

*4:総務省HP・首長の多選問題に関する調査研究会首長の多選問題に関する調査研究会報告書』(2006年11月17日)18頁

*5:A.ハミルトン, J.ジェイ, J.マディソン『ザ・フェデラリスト』(岩波書店,1999年)334頁

ザ・フェデラリスト (岩波文庫)

ザ・フェデラリスト (岩波文庫)

*6:横田茂『巨大都市の危機と再生』(有斐閣,2008年)247〜249頁

巨大都市の危機と再生―ニューヨーク市財政の軌跡

巨大都市の危機と再生―ニューヨーク市財政の軌跡