法律や条例の規制緩和によって地域活性化を後押しするため、島根県が二〇〇五年度に創設した「しまね版特区」の申請件数が、伸び悩んでいる。初年度の五件から毎年度減り、本年度はゼロ。県は規制自体が複雑で、どう緩和すればいいか分かりにくいことが要因とみて、初の相談会を開くなど、説明に努めている。これまで申請があった八件のうち、特区に認定されたのは四件。旧温泉津町(現大田市)が定住促進へ提案した、県職員などの空いた宿舎をUIターン者に提供する特区は、実施対象を全県に広げて恩恵を共有した。さらに、松江京店商店街協同組合はフリーマーケットをめぐり、本来個々で必要な出店手続きを一本化して行える特区として、認定を受けた。しかし、申請数は〇六年度に二件、〇七年度に一件と、じり貧状態。県は原因を探るうち、規制の難解さに行き着いた。その端緒となったのは、今年七月に、県自らが国に構造改革特区を申請した際の経験。関係法などが複雑で、作業に苦労したことから、九月に県内で相談会を開き、疑問に答えた。四会場で計三件の相談があったという。しまね版特区は、四月と十月の年二回募集しており、誰でも応募可能。相談、問い合わせは、同県地域政策課(電話0852・22・6234)。

同記事では,島根県において,2005年度に導入した「しまね版特区」制度への申請者数が,本年度は現在までに「ゼロ」であることを紹介.同県の分析では,県側の規制が複雑であることが背景にあると分析し,相談会を開催することを予定としているとのこと.同制度に関しては,同県HPを参照*1
同制度では,市町村・NPO・住民グループ・民間企業が,「県固有の各種規制(運用が規制的である場合も含む)の緩和」「既存の事務事業の利便性の向上」「既存施設の他用途利用の容認」「手続きの簡素化」「許認可等に係る手続き」等 *2の見直しを求めて,申請することができる内容となっている.また,「しまね版特区推進要綱」の第10条をみると,個別の規制等の緩和に限らず,アイディア提案を制度的に確保していることも特徴的*3.ただ,同記事にもあるように,具体的な申請状況とその成果はやや限定的な状況にある.これまでには8件の申請があり,その対応を見ると次の通りである.つまり,特区とされた案件が4件(出雲市商いご縁特区,天神市出店参加促進特区,「松江京店・カラコロcoccolo Sunday」集いと交流促進特区,フリースクールのスクーリングを開催する際の高等学校の使用特区),特区から全県に拡大し規制緩和となった案件が1件(県宿舎入居規制緩和),特区認定不可となった案件が2件(島の朝市特区,空き教室活用特区),特区ではなく個別に判断を行う案件が1件(江津風力発電特区)という結果になっている.各申請と結果については,同県HPを参照*4
申請自体が限定的でああれば,特区へと至る成果もまた限定的になることは致し方ない.一方で,東京市政調査会が整理された,国における構造改革特区制度における課題を見てみると,「主要項目の出揃い」,「提案疲れ」,「提案・協議過程におけて所管省庁に対する提案の理解や見解のすりあわせに困難さ」が指摘されている*5.同会では,郵送質問紙調査に基づき,特区構想・計画の未提出・未申請の理由をも把握しており(148〜149頁),同記事を考えるうえでも参考になる.その結果からは,未提出・未申請であった最も多い理由としては,「民間企業,住民等からの要望がない」(34.5%),「本地方公共団体内の庁内調整が整わない」(21.4%),「国による財政措置がないから」(10.8%)との順とある.これらの同会の調査結果からは,同記事のように規制に関する情報が不足している現状を直接的には把握することはできないものの,同調査会の結果にある「要望がない」「調整が整わない」との回答が多い結果の背景には,「要望」がないのでなく,潜在的な「要望」はあったとしても,それを顕在化するための,規制というルールを申請者側においては共有化されていない状況,いわば情報不完備*6にあったのではないかとも察せられる.考えさせらえる事例.