政府の「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」は4日、最終報告をまとめ、小渕優子担当相に提出した。省庁によって異なる文書作成・管理のルールを統一し、文書管理の専門家の下で国立公文書館への移管や廃棄の扱いなどを判断するシステムを提言。公文書館については、現在の独立行政法人から「特別な法人」に改組することが適当とした。
 報告では、公文書管理改革について、「職員が誇りと愛着を持って公文書を作成し、堂々と後世に残せる仕組みを作る」と強調。公文書館は職員数100人規模の特別な法人にし、権限を強化するよう提言した。関係者が利用しやすいよう、同館を現在の東京・北の丸公園から霞が関周辺への移転を検討することも求めた。
 同会議は、薬害肝炎の症例リスト放置など行政文書のずさんな管理を問題視した福田康夫前首相の提唱で設置。政府は公文書管理法案(仮称)を次期通常国会に提出する。(了)

同記事では,内閣府に設置された「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」が最終報告を取りまとめ,担当相へ提出したことを紹介.同日に首相にも担当相より提出*1.閣僚名簿を見る限りでは,公文書管理担当相は,麻生内閣でも置かれているのだろうかという疑問も残るものの*22月4日付の本備忘録5月2日付の本備忘録でも取り上げた同テーマも,10月までに12回の会合が開催され,本報告に至る.
基本的には,国の公文書管理が主たる内容ではあるもの,自治行政に関する文書もまた,審議の際に触れられていた.例えば,自治体の公文書管理に対する記述は,『中間報告』時点では,「対象文書について,行政文書以外の独立行政法人地方公共団体の文書の取扱いをどう考えるか」「適切な管理についての「努力規定」に止めるか,独立行政法人等については,情報公開法と同様の仕分けの法の網をかけるべきか」と取扱方法と,「地方分権改革による地方への権限移譲等の動向も踏まえ,地方公文書館をはじめとする地方公共団体における歴史的な公文書の保存・利用の充実のため,どのような方策を講ずべきか」と保存管理方法に関する論点が提示されていた*3
パブコメのなかでは,「公文書館への文書移行・廃棄に関して明確な規則を定めた法を制定し,地方公共団体にも適用すべき」*4と,新たな義務付けになるのかなあ,という意見も提示されていた.その後の議事録を拝見させて頂く限りでは,余り審議に関する発言もなく『最終報告』へと至った模様.
その『最終報告』では,自治体に関する記述は限定的である.例えば,「地方公共団体の文書については,それぞれの団体で管理が行われるとともに,このうち歴史的に重要なものなどについて地方公文書館での保存・利用が行われている」として,「こうした地方公共団体の文書管理が自治事務として行われていることにも配慮しつつ,国の公文書管理の在り方の見直しを踏まえ、地方公共団体における公文書管理の在り方の見直しの支援や国立公文書館と地方公文書館との連携強化の在り方などについて検討する」*5とするなどのように,今回の提案内での具体的措置は明記されないこととなった模様.そのため「公文書管理法制」では,「地方公共団体は,その保有する文書の適切な管理・利用の実現のために必要な措置を講ずるよう努めること」*6と,『中間報告』では課題設定として例示されていた「努力規定」と位置づけられることになる.自治行政における文書管理については,各自治体の裁量に基づく管理が持続されることになる.
社会保障国民会議の『最終報告』*7とともに,何故だか同日に提出された前政権から引き継がれた審議会における『最終報告』.社会保障国民会議の『最終報告』は,経済財諮問会議の審議事項ともなり*8,前政権からも継続して麻生政権においても重みが置かれている課題.一方,首相からは「しかるべき所に場所やら(職員の)人数やら今後検討していきたい」*9との発言はあったとの報道はあるものの,本報告書はその注目度としてはやや低めか.同報告書が提案する公文書館の「特殊な法人」化(その期待される権能からすれば,「特殊法人」ということではないとは思うが)の具体像がよく見えない部分も残るものの,「行政文書は作成のみならず,その後の過程においても官僚制の下で運用がなされているということができよう」*10との分析もされる文書管理に及ぼす影響を考えると,行政観察者にとっては重要な『報告』か.

*1:日本経済新聞(2008年11月4日付)「公文書管理の最終報告、首相に提出

*2:首相官邸HP「麻生内閣閣僚名簿等

*3:内閣官房HP(公文書管理の在り方等に関する有識者会議)『中間報告「時を貫く記録としての公文書管理の在り方」〜今、国家事業として取り組む〜』(平成20年7月1日)18頁

*4:内閣官房HP(公文書管理の在り方等に関する有識者会議第10回平成20年9月4日開催)「資料5公文書管理の在り方等に関する有識者会議中間報告に対する御意見等募集の結果 」6頁

*5:内閣官房HP(公文書管理の在り方等に関する有識者会議)『最終報告「時を貫く記録としての公文書管理の在り方」〜今、国家事業として取り組む〜』(平成20年11月4日)18〜19頁

*6:内閣官房HP(公文書管理の在り方等に関する有識者会議)『最終報告「時を貫く記録としての公文書管理の在り方」〜今、国家事業として取り組む〜』(平成20年11月4日)24頁

*7:内閣官房HP(社会保障国民会議)『最終報告

*8:内閣府HP(経済財政諮問会議)「平成20年第23回(開催:平成20年10月31日開催)」「平成20年第24回(開催:平成20年10月31日開催)

*9:朝日新聞(2008年11月5日付)「公文書管理、内閣府への一元化求める 有識者会議報告

*10:魚住弘久「行政文書と文書管理のあいだ―官僚制の論理と行動に関する一考察」『都市問題』第99巻第10号,2008年10月,55頁