静岡県藤枝市が1日、岡部町を編入して“新”藤枝市が誕生、全国の市町村数は1年間で16減って1781となった。群馬県富士見村前橋市など3件の合併も告示されており、5月5日時点で1777市町村に再編される予定。市町村数は「平成の大合併」直前の1999年3月末の3232から45%減となる。
 2010年3月末の市町村合併特例法の期限切れを控え、政府内では「そろそろ一段落した方がいい」(総務省幹部)などとして、さらに合併を進めることへの慎重論が強まっている。
 一方、衆院選に向け、攻勢を強めている民主党は「当面、700−800程度に集約する」とする目標を提示。政権交代もあり得る中、ある政府関係者は「これだけ政治情勢が流動的だと、合併について政府として明確な方針を打ち出すのは難しい」と話している。
 政府の第29次地方制度調査会は09年夏の答申に向け、現行法が期限切れとなった後の市町村合併の在り方を検討している。委員からは「地域のばらつきはあるが、10年間で十分な進展を見せた」(西尾勝東京市政調査会理事長)、「国が干渉したり、促進したりするのはやめるべきだ」(山本文男全国町村会会長・福岡県添田町長)など平成の大合併の打ち切りを求める声が目立っている。

同記事では,市町村合併により,本年5月5日付で1777市町村となり,1999年3月末の3232市町村から45%減となることを紹介.
下名,思い返せば,自治業界(そんな業界が実存するのかがよく分かりませんが)に入らせて頂いたのは,1999年.当時の市町村数は3232であり,その内,都市自治体が670であることを所与として調査・観察を行っていたことからすれば,改めて,同数値を拝見すると,この10年間での自治行政の領域における最も大きな変化.ただ,その大きな変化の割には,下名,議会という観察的課題とともに,市町村合併(及びその研究)には,全くと言って良いほどに観察的関心を持っていない課題の一つ.下名の,自治行政における観察的生活の基本的な視角である,「変化のなかの不変(普遍)なものを見る」という点からは,もう少し関心を持つべき課題であったかと,年の初めに大いに反省.
同記事は観測的な記事とは察せられるが,同記事が実現することになれば,財政的側面,人口規模等を踏まえての中央政府による施策等という「環境的要因」*1の変化になる.「環境的要因」の変化により市町村の選択的行動も変化するのだろうか.同分析を拝読すると,今次の一連の市町村合併においては,「市町村は自らの置かれた立場,すなわち環境的な位置と,合併先との関係,すなわち戦略的な位置とを,ともに計算し,合併の問題に対処した」(126頁)ともある.同記事のように,環境的要因が変化した場合,市町村側の戦略的行動も又変化せざるを得ないことも想定される.特に,「政治の季節」から開始され「経済の季節」*2にその終焉を迎えた「昭和の大合併」期とは異なり,財政状況等の初期条件が厳しい中にあり,「合併市町村においては、内部管理等の重複部門の削減やスケールメリットといった合併の効果を活かしつつ,積極的な行政効率化の取組がなされており,今後,合併算定替の効果とあいまって,財政運営の改善がもたらされると期待できる」*3という効果があるのであれば,今後も又,市町村合併への自制という選択肢のみが主流化するとは必ずしも限らないようにも考えられるのではないだろうか.市町村合併特例法以降での市町村の選択的行動こそが興味深いようにも考えられる.長期的に要経過観察.

*1:城戸英樹・中村悦大「市町村合併の環境的要因と戦略的要因」『年報行政研究43 分権改革の新展開』(ぎょうせい,2008年)115頁

年報行政研究43 分権改革の新展開

年報行政研究43 分権改革の新展開

*2:福永文夫『大平正芳』(中央公論新社,2008年)96〜97頁

大平正芳―「戦後保守」とは何か (中公新書)

大平正芳―「戦後保守」とは何か (中公新書)

*3:総務省HP(合併相談コーナー)市町村の合併に関する研究会『「平成の合併」の評価・検証・分析』71頁