横須賀市は二〇〇九年度から、放置されて保管期限の過ぎた自転車を海外で有効利用してもらうため業者に売却する。これまでは管理状態のよい自転車を除き大半を廃棄処分していた。処分費用もかからなくなるため、財政難の市にとっては“一石二鳥”の取り組みといえそうだ。
 横須賀市は交通の支障になっている駅前などの放置自転車を三カ所で保管し、保管期限の二カ月を過ぎた自転車は条例に基づき市が処分している。処分台数は年間四千台前後に及ぶ。このうち、比較的状態のよい自転車は一台千円以上で横須賀市リサイクル自転車協力店に払い下げているが、全体の一割程度。払い下げを受ける店側も営業に支障が出ない程度に抑えているという。残りの自転車は産業廃棄物として処分するが、一台につき三百二十五円の処理費用がかかる。〇八年度はことし一月までに三千百五十台を処分したため、ざっと百万円を業者に支払った計算だ。
 資源の有効利用を図る目的で、〇九年度からは廃棄処分していた自転車を入札で売却する。主に海外へ輸出して整備し直し、再利用することになるという。〇九年度予算では一台三百八円で約三千五百台を売却すると想定し、百八万円の歳入を見込んでいる。ただ、売却価格は景気悪化前の昨年九月に見積もった価格のため、「実際はもっと安くなるだろう」と市土木みどり部はみている。同部によると、保管期限の過ぎた自転車の海外輸出は川崎市大和市で実施し、定着しているという。

同記事では,横須賀市において,保管期限を超過した「放置自転車」を事業者へ売却することを開始することを紹介.
自転車を利用による,外部性としての「放置」問題.結果としての財源となるものの,今後安定的な財源とするにはやや限界があり,更には,そもそもの「放置」の「発生抑制(reduce)」の制度対策が,まずありきとも考えられなくもない.「放置自転車の規制」の流れとしては,同市HPにもあるように*1,「放置禁止区域の設定」し,「区域内に駐輪された自転車の即時撤去」,その後「撤去した自転車を保管」する.そして,所有者が名乗り出た場合には「撤去・保管費用の徴収」,また,名乗り出ずに一定期間経過した場合には,同記事のように,「売却・廃棄」という流れが一般的*2
これに対して,「発生抑制(reduce)」の策としては,例えば,「自動車の車輪止めの自転車版」として「車輪止め」*3の導入という提案もある一方で,大別すると,「量的拡大」手法として「駐輪場の新設」(前掲,清水2009:14頁),「質的拡大」手法として「駐輪場の有効利用」(同頁)とに整理される.そして,前者については,その費用調達のために,利用者負担化,事業者負担化,住民負担化の3種類があるものの,結果的には「これら」「を組み合わせて,広く負担を求めていく手法がとられることになる」(同頁)ことが現実的な制度.ただ,このような「経済的措置」による制度は,「徴収漏れ,すなわち,フリー・ライドが多いようであれば,制度そのものに対する社会の信頼感が得られなくなり,結局,妥当性に欠ける制度ということになる」*4こともあり,同制度が初期設定する目的の実効性が不確定生間となりうる.
2008年9月24日付の本備忘録でも取り上げた「レンタサイクルシステム」「コミュニティサイクルシステム」が試みられる際にも,まずは前提となる「放置」問題対策.古典的な問題とはいえ,考えさせられる制度設計上の課題.

*1:横須賀市HP(よくある質問)「放置自転車の撤去について知りたい

*2:清水敦「市は駅前の放置自転車を即時撤去することができるか」『自治実務セミナー』2009年2月号,14頁

*3:阿部泰隆『やわらか頭の法戦略 政策法学講座 続』(第一法規,2006年)123頁

やわらか頭の法戦略―政策法学講座 続

やわらか頭の法戦略―政策法学講座 続

*4:北村喜宜『行政法の実効性確保』(有斐閣,2008年)25頁

行政法の実効性確保 (上智大学法学叢書)

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