全国で初めて、福島県矢祭町議会(定数10)が議員の「日当制」を導入して1年がたった。2007年度に3473万円だった報酬総額は08年度、1206万円と3分の1近くに激減した。1人当たりの年間報酬約120万円は全国で最も低い。「透明性が高まり、分かりやすくなった」との声も寄せられ、「日当制元年」はまずまずの滑り出しだったようだ。
 町議の一人はこの1年を振り返り「以前は『月給泥棒』と言われたこともあったが、そんな声も聞かれなくなった」と感慨を漏らす。導入前は1カ月20万8000円の報酬と期末手当があったが、今は「一日3万円」を「議員活動日数」に掛けた額。08年度は全議員出席の定例会などが33日間で、委員会の日数などが加わる。最高額の議長は60日間で180万円、最低は34日間の102万円だった。
 全国町村議会議長会の調査(08年7月)では、町村議の月額報酬は平均約21万円。最低は長野県王滝村の約8万円だが、期末手当を含めると年間計約130万円に上り、矢祭町が下回る形になった。一般会計が約25億円の町にとって、2200万円の節減は決して小さくない。古張允町長は「ありがたく町民サービスに使わせていただく」と歓迎する。
 日当制を提案した菊池清文町議は「議員活動はおろそかになっていない。報酬と議会活動の関係が明確になり、透明性が高まった」と言う。富永盛彦議長は「今までは閉会中の議員の活動が見えなかったのに対し、日当制になって分かりやすくなった」と指摘し、今後も議会改革を進めていく考えだ。ただ1年たっても異論はくすぶっている。批判的な立場の鈴木正美町議は「若い人が議員になれない。最低限の保証は必要だ」と話し、時期をみて見直しの議論を提起したいという。

同記事では,矢祭町議会において導入した議員の「日当制」の1年間を振り返り紹介.2007年度は3,473万円であった報酬総額万円,2008年度には1,206万円となったとのこと.一般的に,制度の構想・検討時,審議時,導入時の報道に比べて,「その後」に関する情報は著しく限られるなか,同種の記事は大変貴重.「日当制」となれば,必然的に同記事のように「期末手当」が廃止されることになるものと,同記事を拝読し,改めて認識.これにより,同町議会の日当制において規定されている*1「正規の会議」(第3条第2項(1))が,例え増加し,日勤回数が増加した場合でも,期末手当が未支給であることで,同記事のような効果に至るものと納得.
2008年8月11日付の本備忘録でも整理し,地方自治法に基づく地方議員の「三つの財布」*2のうち,同年7月9日付の本備忘録で第203条の改正を触れた「第一の財布」である「議員報酬」.「期末手当」に関しては,第5版の「松本・逐条」では「期末手当とは,現在の給与体系からすれば国又は地方公共団体から生活給的色彩を受けている職員,たとえば,給料を受けて自己及び家族の生活を維持している常勤職員についてなじむもの」として「額の決定その他について慎重に考慮をはらうべき」*3とある.「長野・逐条」のうち,手元もあった少し古めの版(第5版)を拝読すると,「純然たる勤務に対する反対給付としてのみの意味をもつ報酬を受けている非常勤職員については,理論的にもはなはだ納得し得ないものがあるといわざるを得ない」*4と甚だ語気が強い.更に,「国家議員との均衡を考慮するとしても,前者が一年の大半を家郷を離れ家業を放擲して会議に出席しているに比較して,地方議会の議員の勤務の実績はその実情を異にすることを思い合わせるとき,本条の援用は慎重になるべきもの」と,以降の「長野・逐条」や「松本・逐条」では拝読することができない「思い」も示されている.
同「長野・逐条」では,同「思い」に至る根拠の要因ともされた,議会の議員が「非常勤の職員」であるという理解では,前掲の「松本・逐条(第5版)」では,「三議長会」(666頁)への配慮もあってか,「改正前の規定の沿革をみると,当初は「非常勤の職員」という文言ははく,地方公務員法の制定後,昭和27年の本法の改正により「非常勤の職員」という文言が入つたもので,議会の議員まで「非常勤の職員」とされていたのかどうかは,疑問がある」(同頁)と,感想とも,見解とも読むことができる同条項への理解が,括弧書きが示されている.議員の位置付け論の効用は,個人的には整理がつかない課題ではあるものの,その議員報酬に占める「期末手当」の重みを想定すると,期末手当の扱いは,興味深い.要観察.

*1:矢祭町議会議員の報酬及び費用弁償に関する条例

*2:吉田慎一・山本修嗣「議員を生み出すコスト」佐々木毅・吉田慎一・谷口将紀山本修嗣『代議士とカネ』16頁

代議士とカネ―政治資金全国調査報告 (朝日選書)

代議士とカネ―政治資金全国調査報告 (朝日選書)

*3:松本英昭『新版 逐条地方自治法第5次改訂版』(学陽書房,2009年)668頁

新版 逐条地方自治法

新版 逐条地方自治法

*4:長野士郎『逐条地方自治法 第5次改訂版』(学陽書房,1960年)624頁