多摩市は30日、職員が昇任試験を受けなくても、年齢や経験年数などに基づく選考で、給料表上、特別に昇給して上位の職務給をもらえる「1職2級制度」を廃止した。職務・職責に応じた職務給に転換するのが狙い。給与水準を押し上げる一因にもなっていたという。
 市人事課によると、市は1992年に都の給料表に準拠した際、この制度も導入した。例えば、給料表上、主任職は3、4級、上位の係長職は4、5級になっており、選考により4級に昇給すれば、主任のまま係長の給料をもらえた。
 都は2007年度末に同制度を廃止。市も「年功的な給与上昇の抑制を図る」として職員組合と交渉し、「1職1級」に切り替える給与条例改正案を6月の市議会定例会に提案し、可決された。都市町村課によると、今年1月時点で多摩地区の自治体ではほかに、国立、小金井、八王子、小平の4市に同様の制度があった。国立市は4月に廃止し、小金井市は今年度末に廃止する予定。八王子市は廃止後の経過措置を巡り、職員組合と交渉を続けている。小平市も廃止に向け、職員組合と交渉している段階。

同記事では,多摩市における昇給制度を改正したことを紹介.
2009年6月15日付の日本経済新聞では,「平均給料と諸手当,ボーナスを合計して2008年4月時点の平均年収を推定」された全国の地方公務員給与の現況報道*1と報道.同報道では,「最高は東京都多摩市の845万円」と算出されている.また,より詳細な調査結果については,「日経グローカル」(No.126,2009年6月15日号)において,「全地方自治体の平均年収(一般職員)」の一覧とともに掲載*2されており,同誌の同記事も又,要参照.
同誌における分析結果を拝読すると,「多摩市が特に高くなったのは,人事制度が影響」とあり,その例示として「主事や主任を長く勤めていると,係長に昇格しなくても給料は係長並みに上が」(28頁)ることにある.あわせて,同記事にも紹介されているように,「市人事課では「1職2級制」と呼んでいた」(同頁)として,これに対しては「実際の職務よりも上の級の給料が支払われることは一般に,「わたり」として知られている」(同頁)とあり,いわゆる「給与管理の諸技術」*3として,補足説明が加えられている.同市の2008年度のラスパイレス指数は,102.3*4と,2008年度では,全国順位の上位20自治体には含まれない*5ものの,同紙(同誌)の調査結果では,上記の通り「各種手当をすべて足して,平均」(28頁)したことで,同結果になったとある.同誌では,同市が同結果の状況となった要因としては,「多摩市は,市民協働を推進しているため土日の出勤など時間外勤務が他の自治体より多い」(28〜29頁)こと,「住民一人あたりの職員数が少ないという事情もあり,残業時間は長くなりがち」(29頁)であることを指摘する.同誌では,同市が同記事にあるように,「6月議会に「一般職の職員の給与に関する条例」の改正案を提出した」ことを紹介もする.
一方で,同市では,同紙の報道に対して,「算出方法を日本経済新聞社に照会」した結果,「平成20年4月の支払い給与(給料+各種手当)を12倍することで1年分とし,これに賞与を加えた」算出方法であったことを紹介するとともに,同結果になった背景としては「昨年4月は,組織改正に伴う諸整理や事務所の移転」や「有料指定袋によるごみ収集への移行などの業務が重な」ったことで,「特別に時間外勤務手当が多い月」があったとする.そして,「平成20年度の支給実績をもとに算出した平均給与は804万円」であり,これによって「順位は入れ替わると思」うとの判断が示される一方で,「それでも全国または多摩地域26市のうちの上位にあることには変わりません」とする*6.そして,同市では,「上位」に位置する要因としては,「職員の年齢構成」と,同記事にもある「人事給与制度」にあるとする.後者の「人事給与制度」については,「平成4年」に同市が「東京都の給料表に移行し」た際に,「東京都が導入していた「1職2級制度」を制度化」,そして,「同制度は.他市においても取り入れ」たと,東京都の給与制度からの経路依存と,同都内の市町村における同制度の収斂化の様相があったとする.一方で,「現在では,東京都はこの制度を廃止」し,「他市でも年齢,経験等による級の格付の見直しが行われて」いるともあり,これまた制度化と同様の動態があるとする.同市でも,「職務・職責に応じた職務給への転換」,「年功的な給与上昇の抑制を図るため」,「6月定例市議会において給与条例を改正し,6月末日をもって「1職2級制度」を廃止」する方針であったとする.本年度の給与制度改正中という,2008年度実績に基づく報道・分析結果が紹介された模様.
同誌の分析結果からは,基本給の抑制の一方で,手当の増加が,他の推進施策によるという,いわゆる「逆機能」*7の一種なのか,又は,市民協働論と行政改革論の両論が「同床異夢」*8であるのだろうか,と非常に考えさせられる.

*1:日本経済新聞(2009年6月15日付)「自治体職員の平均年収「700万円超」1割 08年4月時点」(新聞紙版では,若干ではあるが,同推定結果を詳しく報道)

*2:磯道真「都道府県・市区町村職員の平均年収が判明 多摩・鎌倉・芦屋の3市が800万超す 東阪の一部事務組合に目立つ厚待遇」「日経グローカル」(No.126,2009年6月15日号)28〜41頁

*3:礒崎初仁・金井利之・伊藤正次『ホーンブック地方自治』(北樹出版,2007年)209頁

ホーンブック 地方自治

ホーンブック 地方自治

*4:総務省HP(地方公務員の給与水準)「市町村別ラスパイレス指数等の状況

*5:総務省HP(地方公務員の給与水準)「市区町村(指定都市及び中核市を除く。全1,755団体)のラスパイレス指数の状況 

*6:多摩市HP(ようこそ市長室へ市長メッセージ)「職員の給与の適正化に向けて(平成21年6月)

*7:ロバート・K. マートン『社会理論と社旗構造』(みすず書房,1961年)181〜183頁

社会理論と社会構造

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*8:森田朗『制度設計の行政学』(慈学社、2007年)531〜533頁

制度設計の行政学

制度設計の行政学