衆院の解散・総選挙が迫る中、開票作業時間を短縮しようと、県内の各市町村で投票用紙の「自動読み取り機」を導入する動きが進んでいる。過去に行われた選挙で、大幅な時間短縮につながったことが理由だ。一方で、1台あたり200万円以上するため、導入をためらう自治体も多い。(天野雄介)
「とにかく速いですよ」。自動読み取り機2台で次期衆院選に臨む関市選挙管理委員会の関係者は、こう利点を語る。
 県選管が先月に調査した開票終了予定時刻によると、関市は前回衆院選より小選挙区で1時間42分、比例代表で2時間27分も早い確定を予定している。関市は2007年7月の参院選で初めて導入し、大幅な時間短縮に成功したため、新たに1台を追加購入した。効果は、05年と今年1月に行われた知事選を比較すると顕著に表れる。関市は市町村合併の結果、知事選の投票数が前回よりも約4600票増加した。だが、自動読み取り機1台を使用し、開票作業にあたる職員27人を削減したにもかかわらず、47分短縮できた。
 同市選管事務局の井藤敏博書記は「速さだけでなく、人件費の削減など効果が高い」と話す。県内48か所(岐阜市2か所、揖斐川町6か所)の開票区を管轄する各市町村選管に問い合わせたところ、新たに導入する岐阜、各務原海津市養老町など17市町を加えて計18市2町が次期衆院選で自動読み取り機を使用すると答えた。前回は大垣市など3市だけだった。
 一方、土岐、瑞浪市、大半の町村は使用しない方針。値段が高く、「予算が下りない」ことを主な理由に挙げている。ただ、自動読み取り機に頼り過ぎることも危険だ。人の直筆を読み取るため、誤判別も起こる。誤字、脱字でも同様のケースがあるという。すでに導入済みの選管担当者も「最後は人の目による確認が大切」と口をそろえる。県選管は「自動読み取り機の導入や手作業の訓練など各自治体で様々な工夫が行われている。正確で迅速に『確定』を出したい」と話す。機械の早さと正確な目視確認という双方を生かすことが大切だ。

同記事では,岐阜県に位置する市町村において,選挙に伴う投票用紙の「自動読み取り機」を導入する傾向について紹介.「選挙の夏」*1ということもあり,選挙関連の自治行政も若干あり.ただ,同分野については,下名,全く観察したことがないため,拝読させていただくだけでも,勉強になる記事が多い.
同記事内で紹介されている自動読み取り機については,同記事の写真から判断する限りでは,恐らくは,下記HP*2のものなのだろうか.同機であれば,その機能は,「毎分600枚」で「手書き文字を自動読み取り」を行い,「最大20段まで増設可能なスタッカーに分類収納」することでき,更に「天地識別機能」があり,「混合状態でセットされた投票用紙の天地を自動識別し」たうえで,「読み取り後,天地別に分類収納」する.また,「裏票識別機能」もあり,「裏票を自動識別し」たうえで,「裏票用に割り当てられたスタッカーに収納」するという.更に,「多数の立候補者に対応」するとあり,「立候補者(政党名)は最大750件・文字列6,000パターンまでの登録が可能」とある.なるほど,「現場で体験してきた実感と整合性をもって主張される現場の勘」とされる「現場条件に「状況依存した」」*3,まさに「ローカル・ノレッジ」を反映された技術化ともいえそう.便利そう.
一方で,2009年6月25日付の東京新聞による報道で取りあげられた*4,足立区の「開票作業をスムーズに進めるため区が養成したスペシャリスト・グループ」である「カラス軍団」(正式名称は,「進行連絡係」)のように,現場の体験に基づく技術化・共有化もまたある,という.同紙の報道に基づく,同軍団の実績では,「前回の二〇〇五年都議選」においては,「足立区の開票作業は午後八時四十五分に始まり,同十時三十七分に終了」,同区では,「有権者数が二十三区で五番目に多い」なか,「票の確定時間は三番目に早い」結果になったという.そして,「一分当たりの開票数」については,「二千二百三票」と(恐らく,同記事の文脈からは,母集団は23区と思われますが)「トップ」であったとする.単純に,上記機種と比べた場合1分間当たりの処理件数は,同軍団を通じた処理が大量に行われていることになる.同記事の内容を,更に拝読すると,同軍団の取組方法や設立経緯についても紹介.具体的には,「約三十人のメンバーが開票作業の全体的な流れを指揮」し,「得票状況に応じて職員を振り分けたり」,「時間がかかる残票整理を引き受けたりと臨機応変に行動」する.そして,「票を開いて分類する作業から,法的知識を基に疑問票を判定する「審査」まで,素早くこなせるよう“特殊訓練”を受けている」という.どんな訓練なのだろう,下名も体験してみたい.設立経緯としては,「この係が生まれたのは一九七二年」であり,「当時は翌日開票で,職員が平日に長く拘束されると通常業務に支障が出たことが背景」となり,「少しでも早く開票作業を終わらせるため,選挙を担当していた当時の総務課の係長が,機動性が高く,団結力も強い「体育会系の職員」を各部署から招集」したという.同記事のみでは,招集された職員が,その気質がいわゆる「体育会系」的であるのか,または,その属性(出自)が真正の「体育会系」なのかは判然とはしないものの,興味深い招集基準.そして,「選挙のたびにチームを組むようになった」として,「メンバーが目印に濃い色の服を着た」ことで,「いつしか「カラス軍団」の愛称が定着」したという.そして,「〇四年の参院選からはカラスをデザインしたTシャツをユニホーム」とされている.そして,「今回の開票作業終了の目標は午後十時半」との目標においており,「候補者が増えそうなのに,さらに短く設定した」とされる.同区では,定数6のところ立候補者は10とあり*5,やはり候補者増加のなか,正確かつ短時間で開票作業に挑まれる模様.
「選挙の夏」が「長い夏」となるのか,はたまた「選挙の夏休み」を迎えるのかは,全く不明ではあるものの,両記事のように,見えざる機器と人力により,選挙という自治行政は支えられているものだと,改めて納得.

*1:日本経済新聞(2009年7月3日付)「選挙の夏、首都総力戦 都議選告示、衆院選の「前哨戦」

*2:日本選挙センターHP「投票用紙分類機

*3:小林信一・小林傳司・藤垣裕子『社会技術概論』(財団法人放送大学教育振興会,2007年)149頁

社会技術概論

社会技術概論

*4:東京新聞(2009年6月25日)「開票最速!足立の『カラス』活動35年 体育会系集め進化

*5:東京都HP(東京都議会東京都議会選挙立候補者一覧)「足立区