福井県は定例県会最終日の8日、副知事を2年ぶりに2人とし総務省出身で地方職員共済組合理事の下河内司氏(54)を起用する人事議案を提案したが、賛成11、反対26で否決された。県会が人事議案に同意しなかったのは1960年9月の教育委員以来49年ぶりで、副知事選任では初めて。西川知事の今後の県政運営に大きな影響を与えそうだ。
 否決後、記者会見した西川知事は「経済問題や新幹線、地方分権、県の売り込みなど重要な課題を抱える時期に体制を整えたかったが、残念ながら多数会派の理解を十分得られなかった。議会との意思疎通が不十分だったかもしれない」と語った。副知事2人体制については「必要性は変わらない。理解を深め、機会をみて、できれば提案したい」としたものの、具体的な時期には言及せず、当面は1人とする方針。
 県会最大会派の自民党県政会(27人)は本会議に先立ち総会を開き、同意するかどうかを協議。「否決すれば事実上の知事不信任」と慎重対応を求める声も出たが、「2人制に戻すのは行財政改革の流れに逆行する」との意見が根強く、会派として反対する方針を決め、本会議では議長を除く26人全員が反対した。県民連合(5人)、一志会(4人)、公明(1人)、無所属(1人)は賛成した。
 本会議開会前に西川知事は正副議長や各会派に対し、2人体制に戻す理由を説明して理解を求めたが、自民党県政会の反対方針は覆らなかった。本会議後、山岸猛夫議長は「知事の説明を十分に聞いた上で、議会として非常に重い決断をした。地方議会が果たす役割を考え、県民目線に立つという意思の表れ」と語った。県は、2005年春に副知事2人制を導入し、民間人の副知事に加え、総務省出身の政策幹を昇格させた。07年7月からは1人体制に戻り、現在は県生え抜きの旭信昭副知事だけとなっている。
 全国で副知事選任が否決された最近の例としては、05年3月の長野県、再任議案を継続審議にして事実上否決した同4月の千葉県などがあるが、数少なく異例。県会と理事者の関係が今後、県政運営に影を落とす局面も予想される。。

同記事では,福井県における副知事の人事案件に対して,同県議会が否決したことを紹介.東京都の副知事経験者からは,「国において立法・司法・行政の三権分立があるのと同じように,自治体でも議会・首長・実務の三分野があるとも考えることができる」*1として,その「実務のトップという意識」に基づく職ともされる同職.しかし,就任に際して,議会による同意という統制が前提となり,不即不離の関係性が同職にはありそう.
本備忘録では,毎日の記事に対して,繰り返した記述は行わない方針ではあるものの,同職に対する議会同意制度については,下名個人的には,同職に対する同意制度を余り上手く整理がつかないこともあるためか,少し別.確かに,2008年4月20日付の本備忘録で触れたように,同職に対する議会同意の必要性は,少なからず理解は出来る.そのため,提案側として,同職を置く(追加する)目的が明確であり,その実現が不可欠であり,例えば,議会からは「行財政改革」の観点から「不同意」という見解が示されることが想定されるのであれば,提案側からは,同人事案件とともに同職に対する給与条例の改正案もあわせて提示するという対策もありそう(実際に行われているかもしれません.すみません).
ただ,このよう「事前統制」の仕組みでは,やはり整理がつかない.2008年6月15日付2009年6月3日付の両本備忘録でも述べたように,その統制は,任期毎でも,任期内の年度毎のいずれでも良いかと思われるが,当初目的に基づく「実績投票」*2として,その実績に基づく,「事後的な統制」とすることが適当であるように思われる.具体的には,2008年6月15日付の本備忘録でも触れたように,地方自治法第162条の同職の選任に際する議会同意に関する規定をまずは削除,次いで,同法第81条の規定を「長,副知事若しくは副市町村長,選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員」と改めることで,「議会による」解職請求等の仕組みもありそう(勿論,議員も又「住民」であるため,同法第13条の「主要公務員の解職請求権」を用いることで,事足りるとも考えられなくもない).どこかで,議論されないかと,少し期待.

*1:青山〓「田村秀『自治体ナンバー2の役割―日米英の比較から』(第一法規,2006年)」『年報行政研究44 変貌する行政』(ぎょうせい,2009年)190頁

変貌する行政―公共サービス・公務員・行政文書 (年報行政研究)

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*2:ブライアン・カプラン『選挙の経済学』(日経BP社,2009年)200頁

選挙の経済学

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