府人事委員会は17日、来年度から職員採用試験問題を独自に作成する、と発表した。独自に作っている東京都人事委員会に8月1日から来年2月末まで、課長補佐級の職員2人を派遣してノウハウを学ばせ、問題作成に生かすという。
 府は、財団法人・日本人事試験研究センターに年間170万円の会費を支払い、試験問題の提供を受けていたが、橋下知事が「自治体が試験問題を作れば、(官僚の)天下り先の外郭団体もいらなくなる」などと、今年度から支払いを拒否。同センターから問題提供を受けられなくなったため、府は約450万円で民間に問題作成を委託していた。

同記事では,大阪府において,2010年度からの職員採用における試験問題の独自作成に向けて,東京都人事委員会に2名の職員を派遣する方針であることを紹介.同取組については,同府及び東京都HPを参照*1
大阪府としては「地方分権の観点から」,「大阪府独自の択一式試験の問題を平成22年度から作成する」として,「東京都人事委員会事務局へ派遣し,択一式試験問題作成のノウハウを習得させること」を目的としており,受入れ側である東京都は,「職員採用試験問題の独自作成をめざす大阪府からの依頼を受けて,東京都が府職員を受け入れ,55年間の実績に裏打ちされた実践的な研修計画の実施によりそのノウハウを提供すること」が目的とされている.2名の職員は,東京都人事委員会事務局の試験室研究調査課に配置される.同記事にもある財団法人日本人事試験研究センターに関しては,2009年7月17日付の共同通信による報道では,「2008年度は都を除く46道府県が」同財団に対して「年170万円を払い,問題の提供を受け」ており,また,「同センターは元人事院事務総長が会長や理事長を務めている」*2という.
(本備忘録では,お馴染みとなりますが)財団法人日本都市センターが全国の市区に対して,2007年度(2007年11月〜2008年1月)に実施した,アンケート調査(回収率74.0%)結果をもとに,本年発刊された書籍では「採用競争試験の日程管理」について分析が行われており,同分析結果からは,「試験日程の統一化という傾向」*3が指摘されている.
同傾向の一つの要因が「問題作成」の「主体」とその主体を受けた問題の「利用」にあることは,同稿の指摘の通り.恐らく,同府に限らず,独自に問題作成に取り組み始めた場合,2009年1月25日付同年2月13日付同年3月22日付の各本備忘録でも取り上げた,職員採用試験の「前倒化」や,更に,2008年12月28日付2009年1月17日付同年3月25日付の各本備忘録で触れた,自治体人事管理における「半開き(semi-open system)」への(妄想的)仮説を踏まえると,同年5月17日付の本備忘録において指摘した「試験日程の統一化」から,「試験日程の多様化」へと移行する蓋然性も高いように考えられる.果たして,同府が来年度以降,どのような採用日程で臨まれることになるか,要観察.

*1:大阪府HP(報道発表資料)「東京都人事委員会事務局への職員派遣について」,東京都HP「大阪府からの派遣職員の受け入れについて

*2:共同通信(2009年7月17日付)「都が大阪府に採用試験の作成協力 府職員受け入れ

*3:福島貴希「都市自治体における職員採用」村松岐夫・稲継裕昭・財団法人日本都市センター編著『分権改革は都市行政機構を変えたか』(第一法規,2009年)155頁

分権改革は都市行政機構を変えたか

分権改革は都市行政機構を変えたか