子どもの減少で廃校になる小中学校が福井県内でも増加する中、各市町は旧校舎の利活用に頭を悩ませている。地域の象徴的な建物だけに簡単には取り壊せない一方、へき地にあるなどの”使いにくさ”が影響し、地元の催しなど単発的な使用にとどまっているケースが多い。県は本年度、地域活力を引き出す場として廃校舎の利活用に対する補助制度を設け、有効利用を促す構えだ。
 少子化の影響などで県内では、2004〜08年度の5年間で8市町の16小中学校(14施設)が廃校になった。このうち5施設は老朽化により取り壊された。継続的に活用されているのは3施設。04年度末に廃校になった敦賀市愛発小中は3年後、6千万円をかけて改修され愛発公民館に生まれ変わった。05年度末廃校の池田町の池田一小水海分校は公民館の講座などに活用。同年度末に廃校になった大野市六呂師小は、自然体験活動を行うNPO法人生涯学習の拠点として使われている。
 一方、活用策を模索中の5施設は、今のところ具体策が見えていない。背景には、廃校になる学校はへき地に位置して地理的な利便性が低い上、災害時には住民の避難場所として開放する必要があることなどがある。敦賀市は、05年度末に廃校となった葉原小の活用策を地元住民とともに検討中。地場産野菜などを販売する催しを2回開いたが、長期的な利活用には至っていない。同市は「学校は建物が大きすぎて使い勝手がよくない」と苦慮する。昨年度末に日引小、神野小、音海小中が廃校になった高浜町は、廃校舎利活用庁内プロジェクトチームを設置した。維持管理費がかからないよう民間への貸し出しを有力な選択肢にしているが、避難場所としての機能を残すことや地域の運動会に開放することなど条件が多く、先行きは不透明だという。小浜市は、07年度末に廃校になった下根来小について検討。現在はイベントなどで年数回使っているのみ。卓球練習場という案もあったが、市中心部から約10キロ近い距離がネックになり実現しなかった。同市は「地域住民の愛着、思い出があり壊すことは考えていないが、今のところ具体策はない」としている。
 少子化や廃校により失われがちな地域の活力を高め、活動を盛んにしようと県は本年度、廃校舎・空き教室利活用支援制度を設けた。公民館や自然体験施設、ギャラリーなどへの活用を想定し、改修や設備工事などに対し、廃校舎は上限1500万円、空き教室の場合は同350万円を補助する。第1弾として、宿泊機能を備えた生涯学習センターに改修する越前町糸生中(昨年度末に廃校)に対する補助を、9月補正予算案での計上を検討している。県市町村課の柿木孝勇課長は「利活用を後押しする制度創設を要望する声が市町からあった。有効利用できるよう積極的に制度を使ってほしい」と話している。

同記事では,福井県内に位置する市町において,廃校に伴う校舎の活用方法の検討・取組について紹介.昨日,本務校で開催された大学説明会の模擬講義の折にお話をさせていただいた話題*1との関連からも,行政財産としての校舎の利活用は,2008年11月25日付の本備忘録でも取り上げたように細々と観察を続けている課題の一つ.
財産処分手続の弾力化・簡素化*2が図られたとしても,その利活用の実情は,同記事では悩ましい現状にある模様.文部科学省による調査結果を拝見すると,平成20年5月現在の「公立学校の年度別廃校発生数」は,小学校が273,中学校が76,高等学校が115にある*3.平成14〜19年度廃校分の利活用方策としては,社会体育施設(スポーツセンター等)への利活用が452件と最も多く,次いで,社会教育施設(公民館,資料館,生涯学習センター等)(434)となる.その他には,庁舎等(109),体験交流施設(自然体験施設,農業体験施設等)(96),研修施設(61),老人福祉施設(56)等とある.具体的な取組事例としては,同省HPを参照*4
「面の平等」*5の観点からも配置されたとも解することできそうな校舎という行政財産.「個」の単位でのその利活用状況については,要観察.