千曲市で、今年度採用を予定していた15人のうち8人が辞退、7人だけになるという「異例の事態」(市総務課)が起きた。うち2人は大学院への進学が理由と分かっているが、残りは国や県などの公務員試験と併願しており、そちらに流れた可能性が高いという。市では「不況の影響で公務員人気もあり、受験者も増えたのに……」と思わぬ結果に頭を抱えている。
 昨年8月に実施した採用試験には、2003年の合併以来最多の197人が受験。数年前から受験時の「住所要件」を外し、採用時に同市に住所登録すればいいとしたことも、受験者増に拍車がかかった。辞退者の併願先は、国、県、消防に2人ずつ。市総務課の担当者は「面接などの様子から、民間に流れたのではなく、同じ公務員になったと思う。その意味では、公務員人気は高いと言えるが、ここまで当市の辞退が多いのは意外だった」と話す。市では、不足分を嘱託職員の採用で、まかなっている。

同記事では,千曲市においては,本年度採用予定者のうち,半数が辞退となり,「過半数割れ」の状況にあることを紹介.
2009年7月24日付の毎日新聞の報道によると,「昨年8月の学科試験は197人が受験」されて,「30人が面接」,「10月に15人が合格」しており,「市は面接時に「合格したら入庁する」と確約をもらった」*1との経緯とともに,辞退者の内訳として,「5人は国と県,1人が消防に就職し,2人は大学院に進学」と紹介.
(本備忘録では,お馴染み)財団法人日本都市センターが全国の市区に対して,2007年度(2007年11月〜2008年1月)に実施した,アンケート調査(回収率74.0%)結果に基づき,本年発刊された書籍内で「採用競争試験の日程管理」に関して分析が図られた論攷からは,「試験日程の統一化という傾向」*2が観察されており,同傾向の目的・要因の一つとして,「併願者の抑制」「試験合格者の採用辞退を可能な限り減らしたい」(156頁)という「意思」があることが抽出されている.
上記の毎日新聞による報道からは「内定」後に,辞退者の増加の様相を窺うことができる.勿論,その辞退等の意思は自由ではあるものの,同市のように内定者側から,当該自治体に対して「内定切り」の状況が広がるとすれば,まずは,同市もまた,同市が位置する長野県の採用日程*3への同日化路線の選択や,次年度の安定した職員の「安全確保」に重きを置くためにも,採用機会や要件の厳格化の路線も検討されることになるのだろうか.機会拡大に伴う逆機能を受けて,結果的に機会の制約化への逆コースを歩むことになると,悩ましい.

*1:毎日新聞(2009年7月24日付)「新規採用:異例の定員割れ、15人中8人が辞退 千曲市

*2:福島貴希「都市自治体における職員採用」村松岐夫・稲継裕昭・財団法人日本都市センター編著『分権改革は都市行政機構を変えたか』(第一法規,2009年)155頁

分権改革は都市行政機構を変えたか

分権改革は都市行政機構を変えたか

*3:長野県HP(長野県職員募集のご案内)「平成21年度長野県職員採用上級試験(大学卒業程度)受験案内」(長野県人事委員会,平成21年4月30日)