厚生労働省課長から北九州市初の女性副市長に就任、約2年間務めた麻田千穂子氏(48)が27日付で退任し、職員に見送られて市庁舎を後にした。同省に帰任する。
 同市の副市長ポストは2007年4月に新設された。麻田氏は同年10月に3人目として就任し、福祉や女性・子育て分野を担当。ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)を進める企業の表彰制度創設や、市の管理職への女性登用率を上げる数値目標設定、放課後児童クラブの拡充などに尽力した。読売新聞の取材に対し、麻田氏は「市内でも働く女性に対する理解が進み、職場環境づくりの大切さも浸透したのでは。各界で女性リーダーが育つことを願いたい」と語った。この日、退任の辞令交付式に臨んだ麻田氏は北橋健治市長から感謝状などを受け取り、「市民の声を背に思い切って仕事をしてきた。今後も北九州の力になりたい」とあいさつした。

同記事では,北九州市において,副市長が退任されたことを紹介.同市の「北九州市副市長事務分担規則」(昭和42年5月8日規則第30号)の第2条を拝読させて頂くと,「総務市民局(市民部に限る.),保健福祉局,子ども家庭局及び病院局に属する事務」と「地方自治法第180条の2の規定に基づき,教育委員会の職員に補助執行させている事務」*1を,同職は分担されている.そのため,同職への着任時を紹介した2007年10月10日付の西日本新聞の報道*2や同記事にて紹介されたように,同市を通じた,ワークライフバランスの推進施策にも取り組まれた模様.
同施策に関して,「性別役割分担の変革を目指す雇用平等政策」*3へと至るためには,自治体行政としては,どの程度まで寄与・具体化ができるものかが,常々思案させられる課題の一つ.同課題に対して,同職は,同市における同施策の取組を紹介された論攷内において,「働き方を変えるの当事者は労使であり,行政がどんなに熱心に働きかけても肝心の労使が本気にならない限り本質的な変化は起こらない」*4と明解に言及されている.然は然り乍ら,同職は,同施策において自治体ができることが限定的であると述べる訳ではなく,自治体においても,その「特性を生かしてできること」(75頁)をも指摘されている.それは,「地域リーダーのネットワークを生かし,まちづくりの視点から,働き方・暮らし方を変える運動を行うこと」,「行政の守備範囲の広さ,市民生活への密着度を生かし,市民や企業へ「暮らし」面からの支援や働きかけを行うこと」,「行政の本来業務である保育,学童保育,介護サービスの整備」,「地域においてWLBのモデル職場になること」にあるという.なるほど.
「役割や規範に規定された関係を越えたところ」(上掲・横山2002:404頁)に至るための具体的な施策へ支援の可能性が,自治体行政においても見出せそうか.本日は,静かに考えてみたい.

*1:北九州市HP(条例,審議会情報北九州市例規集(現行版:平成21年04月20日))「北九州市副市長事務分担規則」(昭和42年5月8日規則第30号)

*2:西日本新聞(2007年10月10日付)の「北九州市 「子育て日本一目指す」 初の女性副市長 麻田氏が抱負

*3:横山文野『戦後日本の女性政策』(勁草書房,2002年)387頁

戦後日本の女性政策

戦後日本の女性政策

*4:麻田千穂子「北九州市のワーク・ライフ・バランス推進のの取組」『ジュリスト』no.1383,2009・8・1・15合併号,75頁