瀬戸内市は6日、空席となっている副市長、教育長各1人を公募すると発表した。武久顕也市長と有識者による選考委員会が候補者を絞り、10月ごろまでに市議会への提案を目指す。市によると岡山県内では初。
 日本国籍を有する25歳以上が対象で、行政(同市職員を含む)や民間企業での管理職の経験があり、市内に居住か通勤できることが条件となる。応募の締め切りは9月4日。所定の申込書と4000字以内の論文を提出する。会見で武久市長は「対象は市役所内部と外部に公平に確保し、志のあるふさわしい人材を登用したい」と話した。前の副市長、教育長は武久市長の就任に伴い、7月31日付で辞職。任期は副市長が就任から4年、教育長が前教育長の残任期間の2012年12月24日まで。年収は副市長約1000万円、教育長約914万円。

同記事では,瀬戸内市において,副市長と教育長への候補者の公募を開始することを紹介.2009年8月7日付の読売新聞による報道*1にもあるように,今月「10日から受け付け」開始.また,同記事では,2009年6月3日付及び2009年7月24日付の両本備忘録で紹介した豊岡市の副市長公募の取組のほかにも「教育長の公募は青森県十和田市」と,公募の取組事例についても言及.同公募については,同市HPを参照*2
同要領によると,同市での同職への公募に際して,「行政または民間での豊かな職務経験を活かし,深い見識,豊かな発想力と熱意をもって取り組んでいただける人材」を想定されている.行政・民間を問わないとなると,同市の(現役)職員もまた,有資格者となるのだろうか.興味深い.応募方式は「所定の申込書(顔写真貼付)」に,「本文4,000字以内」で「所定の用紙または市販の原稿用紙にパソコン入力または自筆で」,「経験を活かした取り組みや思いを文章」を記した「課題論文」を添付して提出することが求められている.その際の課題としては,副市長候補応募者へは「豊かな自然と歴史を活かした交流と創造の都市瀬戸内市の実現に向けて」.教育委員(教育長)候補応募者には「自ら学ぶ人づくりを目指して」が示される.上記書類の提出後選考は2回行われ,「第1次選考」では「申込書及び課題論文審査により選考」,その「結果は9月中旬頃応募者全員に文書で通知」される.「第2次選考」は,「9月下旬予定」に行われ,「第1次選考合格者について,個別面接により選考」され,その「結果は文書で通知」されるとのこと.何れの職への給与等は,副市長が「給料月額720,000円」と「期末手当3.0月分(予定)」とある(なお,「厳しい財政状況を反映し,給料月額については当分の間576,000円(20%減額)」とも明記).また,教育長は,「給料月額640,000円」と「期末手当3.0月分(予定)」とあり,同職も同様に「厳しい財政状況を反映し,給料月額については当分の間531,200円(17%減額)」とある.ただ,副市長へは議会同意,教育長には教育委員としての就任に関する議会同意と,その後,教育委員会からの任命手続きを要するため,「候補者決定」後,そのまま何れの職に就任されることにはならない(採用通知は,「候補者」の段階で交付されるのだろうか,または,上記手続後で交付されるのだろうか).
2009年8月6日付の本備忘録で取り上げた,益田市における経営企画部長職への就任者の全国公募の取組や同記事等を踏まえると同年3月5日付の本備忘録で紹介した,堺市における行政区長公募の廃止もその一方ではありまますが),2008年12月28日付2009年1月17日付同年3月25日付同年7月20日付の各本備忘録で下名が「妄想」してみた,自治体における人事管理の「半開き(semi-open system)化仮説」の状況も,うっすらと見えつつあるともいえそうか.ただ,更に踏み込んで「妄想」するとすれば,各職公募への取組が広がることになると,同取組を通じて,需要と供給側間での「暗黙の前提」ともいえる「買い手の独占的,寡占的市場」*3化が生じる虞も生じる蓋然性が低からずある.これらを極力回避・是正するためには,例えば,特定機関が同種の情報を一定基準に基づき集約し掲載する「空席公告」*4の整備も必要になるかと思われるが,どうだろうか.

*1:読売新聞(2009年8月7日付)「瀬戸内市が副市長公募 教育長も

*2:瀬戸内市HP(瀬戸内市副市長・教育委員(教育長)の公募について)「瀬戸内市副市長、教育委員(教育長)候補者 公募要領

*3:八代尚宏労働市場改革の課題」鶴光太郎・樋口美雄・水野勇一郎編著『労働市場制度改革』(日本評論社,2009年)56頁

労働市場制度改革―日本の働き方をいかに変えるか

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*4:稲継裕昭「アメリカ合衆国の公務員制度」『公務員制度改革』(学陽書房,2008年)53頁