【大田原】100年後を見据えた市民のアイデアをまちづくりに生かそうと、市は「市百年大計事業市民提案制度」を創設し、10日から提案募集を始める。100年後も効果を発揮する事業や100年後こそ効果が表れる事業が対象。千保一夫市長は「われわれが種をまいて、後の世代が果実を収穫できるようなものにしていきたい」と話した。
 市の各種計画は最長10年単位でまとめられている。「10年では思い切ったことはできない」(千保市長)との観点から、長期的視野に立ったまちづくりを目指すと同時に、市民参画を促していこうと制度を作った。寄せられた提案は識者や市職員らで構成する選定委員会の審査を経て、来年1月までには事業化する提案を決める。可能であれば来年度からでも事業に着手する方針だ。
 募集期間は9月30日まで。市内在住、通勤・通学者や市内の企業、団体、グループなどが対象。市ホームページなどから提案書を取り寄せ、必要事項を記入の上、持参、郵送、電子メールのいずれかで申し込む。事業が採用された提案者には、子育て支援券が贈られる。市総務部は「実現可能なものであれば、ソフト事業でもハード事業でも構わない。行政では思いつかないような自由なアイデアをどんどん寄せてもらいたい」と市民らに呼び掛けている。問い合わせは総務部企画政策課電話0287・23・8701。

同記事では,大田原市において,市民による事業提案を開始する予定であることを紹介.同取組については,同市HPを参照*1
同事業の要綱第1条によると,その対象事業は,「大田原市の百年後を見据え,百年後においても効用を発揮し続ける事業及び,百年後にこそその効果が現れる事業」*2とある.そして,事業化までの手続は,次の通り.まずは,市民(「市内に住所を有する者」「市内に存する事務所又は事業所に勤務する者」「市内に存する学校に在学する者」「市内に事務所又は事業所等活動拠点を有する企業団体等」(同要綱第4条))から提案募集.提案内容に関して,「不明瞭な点の確認等が必要な場合は,提案者に確認」.次いで,「有識者や庁内関係者で構成する選定委員会において厳正に審査(書類審査)」を行い「提案の活用や事業化等の選定」し,「市長に報告」(同要綱第7条)する.採否の決定は,同報告に基づき「提案の採用の可否を決定」(同要綱第8条).また,同事業として採用された場合,「事業の提案者に対しては表彰状及び薄謝(子育て支援券)の授与」されると同HPにて紹介.また,採択後の具体的な実施にあたっては,「担当部署は,選定結果に基づき事業化」するものの,「提案をそのまま実施するのではなく,より効果を高め,実施しやすいものとするため,提案内容に修正を加える場合」があるとの保留条件をも示す.「マニフェスト」において「政策に関する数値目標,財源,実現に要する期間などを具体的に明記することが過度に強調されている」*3ともされるなか,超長期を見据えた骨太な取組.
ただ,この「事業」という概念.採択する側と公募する側との間では,その認識の一致が見られるのだろうか.上記のように,同要綱では同事業を,「百年後においても効用を発揮し続ける事業及び,百年後にこそその効果が現れる事業」と規定する.このように超長期を見据えた事業となれば,必然的に財源論と他の政策・事業との相補性も論点になりうる.そのため,例えば,持続的な財源的保障における不確実性,時代を超えて継続される事業としての他の政策・事業との優先的配慮の必要性が生じることにもなる.そのため,これらを回避するためにも,同事業が「他の政策の準拠枠組みとなり,システムとしての統合を促進するような政策」として「システム志向性が高い政策」*4(事業)を,「採択」する指向が高いようにも考えられる.一方で,「提案」側は,やはりまさに「事業」であることも反映して,「特定の個別領域における問題解決のために,政府の特定部門の行動の案となる」とされる「個別機能的政策」としての事業が「募集」されるように考えられる.
募集期間は,「平成21年8月10日(月)から平成21年9月30日(水)まで」と約50日間.100年先迄の継続される事業となると,もう少し時間があっても良いのかなあとも思わなくもないが,具体的には,どのような事業が「提案」され,そして「採択」されるのか,要経過観察.

*1:大田原市HP(行政・まちづくり募集要項)「大田原市百年大計事業市民提案募集

*2:大田原市HP(行政・まちづくり募集要項)「大田原市百年大計事業市民提案募集)「大田原市百年大計事業市民提案制度実施要綱」(平成21年5月30日制定 平成21年告示第78号)

*3:山口二郎政権交代論』(岩波書店,2009年)144頁

政権交代論 (岩波新書)

政権交代論 (岩波新書)

*4:山口二郎『大蔵官僚支配の終焉』(岩波書店,1987年)35頁)

大蔵官僚支配の終焉

大蔵官僚支配の終焉