第4次三島市総合計画策定に向けた市民会議の最終回が11日夜、市役所中央町別館で開かれ、市への提案書をまとめた。分野別に主要課題や主要施策をまとめ、個々の提案の形成過程が分かるように詳細な意見も添えた。21日に小池政臣市長に提出する。
 同計画は2011年度から10年間の市の施策に関する最上位計画。市は提案を参考に10年度中に計画を策定する。市民会議は団体推薦者や大学生を含む一般公募者、若手市職員など78人が参加し、6月から6回の会議を重ねた。「くらし」「まち」「なりわい」の3部会、計6グループ別の討議や全体会議で意見交換した。提案書は、総合計画のキャッチフレーズを「水と笑顔を育む協働のまち 三島」とし、保健・医療、福祉、学校教育、防災・消防・救急、自然・環境保全、市街地整備、景観、産業振興、観光、財政・広域などの分野別にまとめた。重点施策としては「多世代間の交流創出」「箱根西麓スローライフの里づくり」「活力ある商店街づくり」などを掲げた。

同記事では,三島市において,第4次の総合計画策定に向けた市民会議としての提案書を取りまとめたことを紹介.同会議の取組については,同市HPを参照*1.総合計画の策定において,「従来のような市民参加における特定者による参加手法から,不特定者,そして,大量参加の機会を提供している」*2取組の一つといえる.同市の同会議の場合,同記事にもあるように78名の参加があり,その内訳は,「団体推薦31人」「一般公募36人(団体で参加してくれる大学生を含む.)」「市職員(若手)11人」とある.
財団法人日本都市センターが全国の市区に対して,2007年度(2007年11月〜2008年1月)に実施した,アンケート調査(回収率74.0%)結果をもと分析された論攷をまとめた,本年刊行の書籍においては,総合計画における参加手法と重点事業数の関係を伊藤修一郎先生より分析されている.同稿を拝読すると,「公募など一般市民の参加を手厚く行うと,その要求に応えるたけに重点事業数が多くなるという仮説を支持」されており,「他方で,利益代表の参加や苦情陳情が要求するのは特定の分野の政策に限られるので,全体としての重点事業数には影響を与えない結果になった」*3との考察が示されている.なるほど.
この分析結果は,2008年11月11日付の本備忘録で紹介した草津市の取組に関するレポート内においても,住民の参加を通じて「行政への過度な要求が出てくる」蓋然性があることも指摘はされている.ただ,同レポートでは,あわせて,「自分たちで何をするかを決め,自分たちで実施する」*4ことの意義が高いこともあわせて述べられており,参加と総花化の間を取り持つ仕組みが必要とも考えられる.住民参加を通じて過度な要求へと至る傾向性が見られるとすれば,計画内容が現実の財政状況等を踏まえた現実的な内容とするため,そして,2009年7月22日付の本備忘録でも触れた「ダウンサイジング政策を効果的に策定し実施する上」での「行政計画」をも含む計画として,現実的な環境下における提案へと変換するためにも,参加の場の運営もまた変換することが適当とも思われる.
そのためには,例えば,同市のように一定割合の職員(同市の場合は14%)が,同じ場に参加することは一定の意義があるように考えられる(つまり,職員の皆さんが,「裏方的」又は「実働部隊的」に,庁内検討グループへの参加に特化するのではなく,実際に住民参加の場へ参加すること).「参加の拡充」が「従来よりも参加の段階が重層化し,参加の経路が多元化すること」*5であるとすれば,その「場」に自治体の職員も(居住の有無を問わず)その自治体で働く一住民として参加をすることを,既に住民参加が計画策定において標準装備となった現代であるからこそ,その効果を考えてみてもよいのかもしれない.

*1:三島市HP(市のしくみ・行財政総合計画・計画:市全体第4次三島市総合計画策定)「第4次三島市総合計画の策定に係る市民会議

*2:松井望・長野基・菊地端夫「自治体計画をめぐる「基本構想制度」の変容と多様性の展開」『年報自治体学会22 自治体計画の現在』(第一法規,2009年)105-106頁

自治体計画の現在 (年報自治体学)

自治体計画の現在 (年報自治体学)

*3:伊藤修一郎「首長の戦略・マニフェストと総合計画」村松岐夫・稲継裕昭・財団法人日本都市センター編著『分権改革は都市行政機構を変えたか』(第一法規,2009年)34頁

分権改革は都市行政機構を変えたか

分権改革は都市行政機構を変えたか

*4:森下康二「“座・でぃすかす”草津版プラーヌンクス・ツェレの取組み」『月刊地方自治職員研修』589号,2009年7月,47頁

地方自治職員研修 2009年 07月号 [雑誌]

地方自治職員研修 2009年 07月号 [雑誌]

*5:西尾勝・大森彌編著『自治行政要論』(第一法規,1986年)325頁