広島市は、民間企業などの勤務経験者を対象にした職員採用試験の受け付けを19日から始める。年齢制限を事実上撤廃した昨年度は、「10人程度」の募集に過去最多の485人が申し込んだ。厳しい経済情勢が続く中、本年度も競争率は高くなりそうだ。
 民間で通算5年以上勤務したことがある「60歳未満」が対象。採用予定は15人程度としている。市は2004年度から中途採用試験を実施している。幅広い世代の優秀な人材を受け入れようと、従来は「30歳以上36歳未満」だった年齢制限を昨年度から緩和した。昨年度は10人が合格し、競争率は48.5倍だった。市人事委員会事務局=電話082(504)2521。

室蘭市は14日、2010年度職員採用試験の受け付けを終了した。応募者数は09年度を4人下回る126人にとどまった。景気低迷で公務員志願者が増えると予想していた市は、「期待外れというよりショック」と戸惑いを見せている。
 応募者の内訳は事務職87人(採用予定10人)、技術職12人(同2人)、消防職27人(同3人)。全体の倍率は8・4倍で、05年度採用試験の32・4倍から5年連続で低下した。市は、民間の雇用情勢悪化などから「応募者は200人は超える」と予想していた。応募者減少の理由について、市職員課は「財政健全化などで、給与が削減傾向にあることが敬遠されたのでは」と分析している。一方、民間企業などで通算15年以上勤務した人を対象にする「キャリア採用」は、09年度より21人少ない10人だった。09年度13人の応募があった医療事務は募集がなかった。キャリア採用の技術職の一部に、技術士などの資格を条件としたことが響いたとみている。(井上雄一)

第一記事では,広島市において,民間企業等職務経験者を対象とした,来年度採用の職員募集を開始し始めることを紹介.
同市の募集案内を拝読すると*1,平成21年7月31日現在で,「民間企業等での職務経験が通算して5年以上ある人」であり,「会社員,自営業者等として2年以上継続して就業していた期間や,青年海外協力隊等で2年以上継続して活動していた期間が該当」する.「ただし,公務員,非常勤のアルバイト,パートタイマーとしての職務経験は該当しません」ともある.第1次試験では,教養試験として,「一般教養についての択一式筆記試験」(2時間30分で50問)と「公務員として必要な大学卒業程度の一般的知識(社会科学,人文科学,自然科学等)及び知能(文章理解,判断推理,数的推理,資料解釈等)」(50問)が出題され,更に「1時間30分で約1600字」の「経験小論文」,第2次試験では,「面接試験(個別面接)」と「一般小論文試験」(文章による表現力等についての筆記試験(1時間で約1,000字)),第3次試験が「面接・プレゼンテーション試験」「集団討論試験」,そして「身体検査」が行われるともあり,採用試験問題の一部に民間企業等の職務経験を踏まえた出題があるものの,他の職員採用の流れ*2にほぼ準じた流れにより実施される模様.現在,民間企業等に勤務しながらの受験となると,やや負担も想定されるのかなあとは考えれなくもないが,2008年7月27日付同年12月28日付2009年2月13日付同年3月20日付の本備忘録で取り上げた採用時の年齢制限の「事実上」の撤廃の取組を,同市でも2008年度より実施されたこともあり「本年度も競争率は高くなりそう」との見込みも同記事では示されている.
第二記事では,室蘭市において,職員採用の受付終了されたことを紹介.
同市では,その応募数が前年度に比べても漸減傾向にあるとのこと.同市の募集要件等については,同市HPを参照*3.特に第一記事との関連で,「キャリア採用」について拝読してみると,同市の「キャリア採用職員」の要件としては,「昭和36年4月2日以降,昭和46年4月1日以前に生まれた方」であり,平成21年8月末現在で「正社員(職員)として民間企業や官公庁などに通算15年以上勤務した方」と,年齢制限とやや長期の職務経験の期間がその要件としては設けられている.その職種は,民間企業に限定せず「職務経験豊富な『即戦力』となる方」*4がその対象とされており,やや広めに設定されている.ただ,「キャリア採用」では,「土木・建築」が募集対象とされており,更に,「土木においては技術士(建設部門)、技術士補(同部門)又は1級土木施工管理技士いずれかの資格を有する方」,「建築においては1級建築士の資格を有する方」との要件が課されている.また,試験では,第1次試験は「「試験申込書」及び「小論文」による書類審査」,第2次試験は,「口述試験(個人面接)及び健康診断書審査」とあり,職員採用では要請される「教養,適性検査,専門」*5に関する試験は,広島市とは異なり,「キャリア採用」では実施は想定されていない.
両市では,その募集する職が異なるため一概には対比できないものの,試験内容の対比のみで見ると,広島市における採用試験に臨む募集者が新たに必要されるコストは高く,室蘭市は,恐らく既にその職務の中で取得しているであろう専門性に基づき判断されるため,試験に臨むための新たなコストの負担は低いようにも窺える(ただ,募集要件では,広島市が広く,室蘭市はやや制約されているともいえなくもないが).採用試験に要する「サンクコスト」*6が高い場合,当該試験を課す自治体への参入は回避傾向になるとも考えられ,また,サンクコストが低いのであれば,参入機会も多いようことも考えられそうだが,両市の地域性,更には,資格要件の存在が,前年度比からの募集数減という結果となったのだろうか.考えてみたい.