浜松市行財政改革推進審議会(会長・鈴木修スズキ会長兼社長)から、政令市の行政区制度の見直しを求められていた同市の鈴木康友市長は18日、2007年度に導入した現行7行政区の削減を目指す方針を議会に伝えた。
 「区の削減は行政サービスの維持、向上に有効」との見解を示した文書を、行革審の意見書とともに正副議長に送付した。行革審は7月上旬の最終公開審議で、人口が比較的少ない“山村型政令市”の同市は区が不要として、行政区を廃止するか、3区程度に縮小するよう求めていた。
 鈴木市長は市町村合併など過去の議論の経緯は重いとする一方、経済環境の変化などから「7区役所の維持管理費、人件費などのコストの課題が浮かび上がっている」と指摘。「区の数を検証し、適切な数、区役所の在り方を議論すべき」と議会に協力を求めた。行革審が区制の見直しとともに求めた議員定数削減などの議会改革については「議会で議論を」と深い言及を避けた。文書を受け取った高林一文議長は「議会改革については前向きに仲間と考えていきたい。ただ、区の削減は市民を交えた協議の場を設けるなど、市民目線の議論が必要だ」と語った。

同記事では,浜松市において,行政区の削減を検討することを同市議会に伝えたことを紹介.2009年7月12日付の本備忘録で取りあげた,同市行財政改革推進審議会の意見書.同意見書では,行政区の廃止(任意設置)を可能とするために,「政令指定都市の意思で行政区設置を決められるよう,国に地方自治法の改正を要望すべき」*1との提案が示されているものの,「行政区存廃について,市民の意思確認と国の制度改正実現には時間を要すると思われ」る,として,まずは「現在の7つの行政区の削減」(4−5頁)が提案.同市長は,同意見書を受けての取組.
確かに,同記事において議長からのご発言内容として紹介された,「区の削減」(合区)においては「市民目線の議論」として「市民を交えた協議の場を設ける」ことも一案.主に,行政区の提供する「機能」の側面の補充・補完策が,同場で議論されるのだのだろうか.ただ,同議論の議題としては,行政区の機能の側面のみならず,制度の側面として,公職選挙法第15条第6項により行政区の区割をもって市議会議員の選挙区となることについての検討もやはり不可避.選挙区定数は「人口に比例して」*2定められるため,「合区」を通じて一選挙区における定数増減を伴うことになる.そのため,一般的には,これにより投票基準の変化を及ぼすとも整理されており,「合区」の議論においては,議会関係者が関与することで,2008年6月3日付の本備忘録でも触れたようた,党派的な選挙区割り(gerrymandering)へと至る蓋然性も否定はできない.同記事では,同市議長のご発言の紹介では,これらを回避するためか,同議論に議会が自ら関与することにやや慎重な姿勢が示されており,同記事にもある「市民を交えた協議の場」を設ける意義も高いようにも思わなくもない.
ただ,「市民を交えた協議の場」において,選挙区定数等の制度的な議論が行われることは,実際上なかなか想定(議論)し難く,また,例え議論がされた場合,「市民としての住民」*3の側面から,同協議の場において将来の「個人投票」*4を念頭においた,「合区」議論に至る虞もなくはない.悩ましい.そのため,やはり,そもそも行政区と選挙区を同一であることを要請する現行の規定は,上記2008年6月3日付の本備忘録でも述べたように,その再検討が行われてもよいのではないかとも思わなくもない.

*1:浜松市HP(浜松市行財政改革推進審議会浜松市行財政改革推進審議会 提言・答申等)『意見書(「行政区の廃止または削減」「議会の改革」「区協議会の充実」について)』(平成21年7月10日)5頁

*2:安田充・荒川敦編著『逐条解説公職選挙法上』(ぎょうせい,2009年)139頁

逐条解説 公職選挙法

逐条解説 公職選挙法

*3:礒崎初仁・金井利之・伊藤正次『ホーンブック地方自治』(北樹出版,2007年)222頁

ホーンブック 地方自治

ホーンブック 地方自治

*4:建林正彦・曽我謙悟・待鳥聡史『比較政治制度論』(有斐閣,2008年)88頁

比較政治制度論 (有斐閣アルマ)

比較政治制度論 (有斐閣アルマ)