総務省は26日、自治会や福祉分野など地域で公共的な活動をしている民間団体が連携し、市町村とも協力する「地域協働体」組織を各地に創設するよう促すため、来年度から全国で実証事業を始める方針を決めた。
 地域活性化を検討する同省の有識者研究会がまとめた報告書を受け、地域の民間活動を促進して、市町村合併地方財政難で低下が懸念される行政サービスを補完する目的。実証事業では協働体の事務所開設や運営を支援する予定で、同省は費用を来年度予算の概算要求に盛り込む。
 地域行事や、児童の登下校の見守りなど、行政がカバーし切れない公共的な活動は従来、自治会など住民の互助組織が担ってきたが、近年は加入率が低下、十分機能しない傾向も。一方で高齢者の病院送迎や、放課後の児童一時預かり、自主防災訓練などに取り組む民間非営利団体NPO)やボランティア組織、まちづくり団体などが各地で誕生している。
 地域協働体はこうした新たな組織と、既存の自治会や地元企業、商店街組合などが提携した「多様な主体による、公共サービスの提供を包括的にマネジメントする」組織とし、各団体の代表で構成。総務省は市町村を通じ、協働体を小学校区単位などで設けるよう呼び掛ける。

同記事では,総務省において,「地域協働体」組織の創設に向けた実証事業を開始する方針であることを紹介.
同記事で紹介されている有識者研究会とは,恐らくは,地域力創造に関する有識者会議.2009年7月28日に開催された第5回の同会議で取りまとめられた『中間取りまとめ』内において,「「新しいコミュニティのあり方に関する研究会」の報告等をふまえ,地域コミュニティ活動の活性化や地域コミュニティやNPO等の地域の多様な主体が協働する「地域協働体」の形成に向けた検討及び調査実験事業を実施するとともに,国会におけるコミュニティ活動基本法制定に向けての動きなども見極めつつ,必要な支援策などについて具体的な検討を進める」*1と記載されており,同記事の内容は,同取りまとめを踏まえての試みの模様.ただ,同取りまとめの記述では,「地域協働体」構想に関しては,「地域コミュニティ活動の活性化や地域コミュニティやNPO等の地域の多様な主体が協働」とやや概括的な記述に止まっており,具体像が今一つよく分からないため,「地域協働体」構想の根拠ともいえそうな,同取りまとめにも記載されている「新しいコミュニティのあり方に関する研究会」の報告を確認.現在のところ,研究会としての「案」の公開に止まっている模様,残念.
同案を拝読すると,「地域協働体」を「地域における多様な公共的サービス提供の核となり,地域コミュニティ組織等など地域の多様な主体による公共的サービスの提供を総合的,包括的にマネジメントする組織」*2と定義する.この設置には,「市町村や都道府県が個別の地域コミュニティ組織等に対してきめ細かく支援することには一定の限界」(31頁)こともその一つの背景とされる.同構想は,「多様な主体」から構成されることからも,「各団体との関係」は様々となることが予期される.そのため,同報告内でも「地域の実情に応じて構築されていくべき」との判断を示されている.ただ,「地縁団体との関係構築」に関しては,「地縁団体が地域住民を比較的網羅的にカバーしている性質があることなどを踏まえることが適当」(13頁),「機能団体(テーマ性を持ったNPO団体等)」との関係については,「機能組織が特定分野において比較的高いサービス提供機能を有することが想定されることからすれば,NPOが地域協働体の意思決定に参画」し,「地域協働体の活動テーマや分野ごとに設けられた部門等の活動を機能団体が担う」(同頁)ことなどのように,各地域団体毎の特性を活かした関係性の構築を図ることを前提に置くことを提案されている.また,行政との関係は,「行政のインターフェイス構築の観点が重要」(14頁)として,まずは,「地域自治区を設置」された後,「長の付属機関である地域協議会と地域の公共的サービス提供を担う実行組織としての地域協働体のメンバーを重複」(同頁)する案が提示されている.そして,国との関係は,「各地域において地域協働体の構築に向けた具体的な取組が行われるよう促す」ことを期待するとして,「具体的な仕組み」がより「実態を踏まえた検討を進める観点」となるように,「地域協働体を地域における公共的サービス提供の一つのモデルとし,地域協働体の立ち上げや初期段階の運営に係る経費等について支援する実証的な事業を来年度から実施すべき」(同頁)との要請がされる.
「地域協働体」の設置は,「地域住民や諸団体の自主性が重要」と同報告内ではあることからも,恐らくは任意設置であることが前提とはされている模様.ただ,「住民の連帯感の希薄化が進行する中にあって地域協働体の創設の契機をつかむためには,市町村から地域住民等に対する働きかけが重要」(20頁)ともあり,市町村側から誘因提供の重要性も指摘する.そのため「地域協働体創設の検討のための場の設置」(同頁)することや,その場等で「例えば,防犯・防災活動や高齢者の孤独死対策など,地域住民等のニーズを踏まえた課題」(同頁)を提示すること,「取組の初期段階」において市町村から「コーディネーターとして職員を検討の場に派遣することや初期費用を負担」(同頁)すること等のように,市町村が果たすことが適当とされる役割がやや具体的に提案されている.
「地域協働体」の構想をあくまで「参酌」しつつ,市町村が自主的に設置することが前提とはいえ,基礎的自治体よりもより基礎的集合体として置かれることになるとすれば,同構想の位置づけが,果たして,「基本的(essential)」,「基幹的(fundamental)」,「基底的(basic)」な*3各要素のうちいずれを含む協働体となるのか,その全てを含むものであるのか,はたまた,いずれでもないものであるのか,考えてみると難しい.