横浜市は28日、来年2月28日で契約が切れる「日産スタジアム」(横浜国際総合競技場横浜市港北区)のネーミングライツ命名権)について、契約相手の日産自動車から、現在と同様の契約条件での更新はしないとの回答があったと発表した。市は今後、条件変更の検討も含め再公募の準備を進める。日産は再公募について「条件が満たされれば前向きに検討したい」としているが、来年3月以降、「日産スタジアム」の名が消える可能性もある。
 日産は「地域貢献の一つとしても重要な役割を果たすと認識しており、契約を継続したいとの希望を持っている」とした一方で、「現下の経済情勢を踏まえた厳しい経営環境のもとで、現在と同様の契約条件での更新は、極めて困難と判断した」などと説明している。
 横浜市では、景気悪化の影響で市税収入が落ち込む中で、少しの歳入減も避けたい状況。担当者は「どうすれば契約が得られるか考える必要がある」などと述べ、契約金額を下げることを示唆している。現在の契約内容は、日産スタジアム横浜国際総合競技場)と日産フィールド小机小机競技場)、日産ウォーターパーク(スポーツコミュニティプラザ)の3施設で年間4億7千万円、05年3月1日から10年2月28日までの5年間で総額23億5千万円。両者の契約では、契約満期の6カ月前に当たる今月末までに日産が更新についての意向を表明することになっており、その3カ月前に当たる5月末に市が意向確認のための文書を日産に送り、交渉していた。

同記事では,横浜市における,横浜国際総合競技場小机競技場・スポーツコミュニティプラザへの命名権について,現在の命名権者から次期契約更新の予定はない旨の回答があったことを紹介.同契約時の概要については,同市HPを参照*1.同記事にもあるように3施設を対象に命名権があり,5年間23億5000万円(年間4億7000万円)の契約となる.
自治体側には,本質的には不安定な性格を持ちながらも,一定期間は安定収入となる命名権制度.一方で,命名権者側からすれば,同日付の同紙にて報道されているように,現在の命名権者の経営方針としては「(開発・生産・販売などに関係しない)ノンコア資産を順次売却していく」*2との判断があることからすれば,命名権が持つ効果は(特に,上記の3つのコア的要素からすれば「販売」上は)不確実性が高いと判断された模様.
そのため,命名権制度は自治体側にとっては財源方策の一つと認識されてはいるものの,一方で,命名権者側としては,同記事にもあるようにあくまで「資産」としての認識に止まり,同契約を通じて命名権者側に明確な利得が顕在的になるよう,実質的な効果の判断を迫られることにもなる.いわゆる「関係的契約」*3を期待するに止まり,結果的には継続的取引への誘因が乏しくなるともいえそう.同紙によると「契約継続の可能性について「条件の見直しが必要.残念だが横浜市の判断次第だ」」との同社からの見解も紹介されている.今後の交渉や同市の対応は,要経過観察.